5-フルオロウラシル (5-FU) に代表されるフッ化ピリミジン系抗がん薬は固形がん治療に汎用されている。副作用発現に関連する要因の一つに薬物動態関連タンパク質活性の個人差が指摘されており、5-FUでは代謝反応を触媒するDPDに関わる遺伝子多型と副作用発現リスクとの関連が指摘されている。一方で、5-FU代謝酵素活性の個人差と生体内核酸代謝物濃度との関連性を明らかにした報告は極めて少ない。 そこで本研究では、内因性ピリミジン塩基とその血中代謝物濃度の一斉定量法を構築し、患者検体における、それら濃度と5-FU代謝酵素群の遺伝的多型、さらに副作用発現との関連を明らかにすることを目的とした。 はじめに、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC/MS/MS) を用いて内因性ピリミジン塩基およびその代謝物計8種と内標準物質 (IS) の血中濃度一斉測定法における各種条件を検討した。 その結果、全ての測定対象化合物のMS/MS条件を正イオンモードのSRMで高感度に分析可能な条件を設定することに成功した。さらに、測定対象化合物8種全てのピークを10分以内にLC分離する条件も設定できた。前処理方法については構築した条件を用いて得たIS補正マトリクス効果は、85%から115%と適正な範囲に収めることができた。少数検体で予試験的に定量直線性を調べたところ、全ての化合物はR2≧0.99の良好な直線性を示すとともに、解析ターゲットしたすべての血漿中代謝物が定量可能であった。 予定していた研究内容のうち、分析法バリデーション・臨床検体の測定およびバイオマーカー性能評価は、現在、鋭意進行中であり、最終的な成果は2024年度中に原著論文や学術集会で発表する予定である。
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