研究実績の概要 |
非小細胞肺癌に用いられる上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬オシメルチニブは、1次治療で用いられる代表的な治療薬であり、血中濃度が治療効果に影響することが報告されている。オシメルチニブは、代謝酵素CYP3A4およびABCトランスポーターによって代謝・排泄される薬剤である。プレグナンX受容体(PXR)は、CYP3AやABCトランスポーターの発現や誘導に関わることから、PXR遺伝子多型によるオシメルチニブの体内動態への影響について検討を行った。 オシメルチニブ治療を受けた非小細胞肺癌患者32名を対象とし、HPLCを用いて定常状態時におけるオシメルチニブ治療開始後15日目のトラフ濃度と投与後7点採血により血中濃度を測定した。PXR受容体のNR1I2 (rs6785049, G>A)、NR1I2 (rs2276707, C>T)遺伝子多型を解析し、オシメルチニブの体内動態との相関について検討した。 オシメルチニブ80mg服用下の血中トラフ濃度において、NR1I2 rs6785049 G/G多型の中央値は247 ng/mL、G/AおよびA/A多型の中央値は219 ng/mLであり、2群間で有意な差は観察されなかった(p = 0.305 )。同様にAUC0-24においても2群間において有意な差は観察されなかった。NR1I2 rs2276707C/CおよびC/T多型におけるオシメルチニブ血中トラフ濃度中央値は、231 ng/mLであり、T/T多型は170 ng/mLであり、2群間で有意な差は観察されなかった(p = 0.223 )。同様にAUC0-24においても2群間において有意な差は観察されなかった。本研究よりNR1I2(rs6785049, G>A)およびNR1I2(rs2276707, C>T)遺伝子多型はオシメルチニブの血中濃度に影響しないことが示唆された。
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