研究課題
【研究目的】ビンクリスチン(VCR)による末梢神経障害は用量依存的であるため、用量制限毒性が設けられている。VCRは主にCYP3A5により代謝されるが、本代謝酵素には遺伝子多型が存在し、*3アレルをホモ接合体で有する場合は、機能的タンパクが発現しない。本研究では、母集団薬物動態解析の手法を用いてVCR薬物動態予測モデルを構築し、CYP3A5*3遺伝子多型が成人びまん性大細胞性B細胞リンパ腫患者の個別化投与設計において有用な指標となり得るか検討を行った。【研究方法】弘前大学医学部附属病院において、初発びまん性大細胞性B細胞リンパ腫に対し(R-)CHOP療法を行った成人患者40名を対象とした。血漿中VCR濃度測定用の採血は、静脈投与終了直後、1、2、3、4、8、12、24時間の計8ポイントで行った。335検体の血漿中VCR濃度に基づき、母集団薬物動態解析ソフトウェアPhoenix NLMEにより薬物動態モデルを作成した。VCRの血漿中濃度は3-コンパートメントモデルに当てはめ解析を行った。【研究成果】母集団薬物動態解析の結果、VCRクリアランスの共変量としてCYP3A5*3/*3が抽出された。最終モデルの母集団薬物動態モデルの母集団薬物動態パラメータは1000回のブートストラップ解析により得られた中央値と近似しており、構築したモデルの頑健性が示された。本結果により、CYP3A5*3/*3患者ではVCRの体内曝露量が増加するため、VCRの投与量を減量する必要性が示唆された。本研究結果は、VCRにおける用量依存的な副作用である末梢神経障害を回避しつつ、最大投与量を維持するための個別化投与設計立に資すると考えられる。
すべて 2023
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Cancer Chemother Pharmacol
巻: 92 ページ: 391-398
10.1007/s00280-023-04580-1