研究課題
肺移植後は術後サイトメガロウイルス(CMV)感染症のリスクが高いため、抗CMV薬であるバルガンシクロビル(VGCV)の予防投与が必要であるが、骨髄抑制が原因で投与継続が困難となる場合がある。申請者はこれまで、肺移植後におけるCMV感染症の実態と抗CMV薬ガンシクロビル(GCV)の至適血中濃度を明らかにするため、京都大学医学部附属病院(京大病院)にて肺移植を受けた患者を対象にGCVのプロドラッグであるVGCVの母集団薬物動態解析を実施してきた。その結果、クレアチニンクリアランス(腎機能)がVGCVの体内動態に影響を与える因子となることを見出したが、腎機能を考慮して投与を行った場合でも依然として骨髄抑制が原因でVGCVの投与が中断となる症例が存在することが明らかになった。VGCVの活性本体であるGCV三リン酸は脱リン酸化酵素であるNudix hydrolase 15(NUDT15)によって代謝されるが、GCV三リン酸の蓄積は好中球減少症と強く相関することが報告されている。本研究では、NUDT15遺伝子多型がVGCVの投与継続に及ぼす影響を検討した。京大病院で肺移植を受けVGCVが投与された患者27名を対象にダイレクトシークエンス法による変異解析を実施した。解析対象のうち、8名はNUDT15活性が低下型であった。服用後における骨髄抑制の累積発生率は、NUDT15遺伝子多型が低下型のグループにおいて高頻度であった (50.0 % vs 13.0 %, p = 0.015)。NUDT15はGCV三リン酸の消失経路において主要な代謝酵素の一つとして機能し、活性低下による代謝遅延は骨髄組織へGCV三リン酸を蓄積させることで骨髄抑制を引き起こす可能性が考えられた。以上より、NUDT15遺伝子多型は、VGCV予防投与の継続率を低下させるリスク因子となる可能性が示唆された。
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Journal of Infection and Chemotherapy
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jiac.2024.02.010
Transplant Infectious Disease
巻: 25 ページ: e14141
10.1111/tid.14141