研究実績の概要 |
【目的】同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)における重大な合併症のサイトメガロウイルス感染症の予防薬として使用されるレテルモビル(LMV)は、中等度のCYP3A阻害作用を有することから、allo-HSCTにて投与される免疫抑制剤のタクロリムス(TAC)との相互作用が想定される。本研究では最適なTAC投与設計に向け、LMVによるTACクリアランスへの影響を検討した。 【方法】当院で2021年8月から2023年7月の間に同種造血幹細胞移植を受け、タクロリムス静注と経口レテルモビルを併用した21例中、アゾール系抗真菌薬を併用した8例を除く13例を対象に、移植後1ヵ月間のTACの投与状況を調査した。対象症例のCYP3A5*3(A6986G)を解析し、TAC投与量との関連を検討した。 【結果】対象13例中、CYP3A5(A6986G) *1/*1は2例、変異アレルを有する*1/*3および*3/*3は11例であった。LMVを服用開始後のTACの投与量の推移は、野生型(*1/*1)群および変異アレル(*1/*3, *3/*3)群においてそれぞれ、3日目では0.0179mg/kgおよび0.0143mg/kgと差を認めなかったのに対し、7日目では0.0211mg/kgおよび0.0120mg/kg、14日目では0.0234mg/kgおよび0.0151mg/kgと、変異アレル群において有意に投与量が低下していた。21日目では0.0249mg/kgおよび0.0132mg/kgと、変異アレル群で低用量となる傾向が持続していた。28日目になるとTACを経口投与に変更する症例が増加したため、解析対象から除外した。以上より、LMV併用時のTACのクリアランスは、CYP3A5(A6986G)の遺伝子多型に影響を受ける可能性が考えられる。
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