【研究目的】抗がん剤の治療効果を十分に得るためには相対用量強度(Relative Dose Intensity: RDI)を保つことが重要であるが、経時的に腎機能を補正したRDIを算出することができれば、より正確で有用な指標となると考えた。Giusti-Hayton(GH)法は薬剤の腎寄与率(尿中未変化体排泄率)から腎機能に応じた投与量を算出する式であり、本研究ではGH法による腎機能補正RDIを算出し、有用性を検討することを目的とした。 【研究方法】切除不能・再発胆道癌における一次治療はゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法であり、二次治療の選択肢が少ないため、癌の進行または副作用の悪化にて継続困難となるまでGC療法が行われる。シスプラチンは腎障害を引き起こす抗がん剤であり、腎機能障害によりGC療法継続が困難となる症例が多い。本研究では胆道癌GC療法が施行された患者を対象とし、腎機能補正RDIの有用性を検討することとした。対象患者における抗がん剤の投与量・投与期間、全生存期間、有害事象を後方視野的に調査し、通常の算出(従来法)によるRDIとGH法による腎機能補正RDIを比較して全生存期間や副作用の発現率との関連性を評価した。 【研究成果】対象患者33人の腎機能、抗がん剤の投与量・投与期間をもとに、シスプラチンとゲムシタビンそれぞれのRDIを算出した。従来法に比べGH法RDIは有意に高値であることが示された。ただし、RDIと全生存期間の関連性を評価したところ、従来法とGH法において有意な差は見られなかった。本研究は、治療強度を腎機能補正式で補正することで新たな指標の可能性を検討したものであり、腎機能低下患者における抗がん剤の減量の妥当性を示すための研究の足掛かりとなると考える。
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