研究実績の概要 |
【研究背景・目的】 筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(mcEDS)における骨・関節病変は患者のQOL低下の主因となるため、その病態解明が重要である。mcEDSでは、CHST14の病的バリアントによる全身性のデルマタン硫酸(DS)欠乏の結果、皮膚ではコラーゲン細線維の会合不全が認められる。一方、骨・関節病変の発症機序については明らかとなっていない。申請者らは、Chst14 欠損マウス(Chst14-/-)で、骨病態の解析を進めており、これまでに患者類似の進行性の脊椎変形や骨密度や強度の低下を発見した。さらに、大腿骨の遺伝子発現解析では、Chst14-/-で加齢による骨形成因子の低下と骨吸収因子の増加が野生型(WT)よりも顕著であった。骨代謝関連因子の変動から、DS が骨リモデリングに関与する可能性を考え、脊椎変形や骨密度・強度の低下の要因を明らかにすることを目的に骨損傷モデルを用いた解析を実施した。 【研究方法】 大腿骨に骨孔を形成し、day 0, 7, 14, 21, 28でのμCT画像から作成した3Dモデルの骨孔面積を測定して骨孔閉鎖過程を解析した。また、各ポイントで大腿骨を摘出して外観の観察とμCTにて骨孔を含む領域の体積を測定し、骨の修復過程を解析した。 【研究成果】 骨孔の閉鎖過程の観察では、期間を通して面積に有意な差は認められず、骨孔閉鎖期間に差はないことが明らかとなった。摘出骨の外観は、day7から仮骨様の構造が確認され、Chst14-/-で骨表面の隆起が目立った。体積は、Chst14-/-で増加が緩やかであり、仮骨の吸収を反映すると考えられる、体積の一時的な減少の時期もWTよりも遅かった。以上の結果から、Chst14欠損によるDS欠乏は骨の修復過程を遅らせることが示唆された。修復過程における骨代謝関連遺伝子の発現解析は今後の課題とする。
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