本研究の目的として市中病院などで使用される正立型生物顕微鏡の機能を損なわせることなく立体視を可能にするため、正立型生物顕微鏡本体には手を加えずに追加できる試作装置の開発を行った。また開発目的に沿うように特殊な部品を出来るだけ使用せず、なおかつ高額にならないように部品を選定しながら幾つかの試作を行い、結果、部品の単価のみであれば数万円態度の低額な試作機を作ることに成功した。それを実際に診断などに使用する正立型生物顕微鏡に搭載し、病理診断などで使用されるヘマトキシリン・エオジン染色のスライドにて立体視が可能であることを確認した。 左右視差での立体視は現在一般的に使用される撮影機器などでは撮影が難しく、同時に再生装置では再現が難しいため、高フレームレートのデジタルカメラによって明滅が一般的に立体視を可能にする60fps以上であることを確認した。そして左右接眼レンズに映る画像の静止画を取得し、画像解析を行うことで左右視差が行われていることを確認した。その成果は第35回生物学技術研究会奨励研究採択課題技術シンポジウムにて「生物顕微鏡での明視野観察において、両側斜光照明により立体視を得る手法の実用化」の表題で口頭発表を行った。 以降は研究目的でもある診断の迅速化に寄与できるよう複数の研究者による効果確認や、他社及び多種の生物顕微鏡で確認及び実績作りと、正立型だけではなく落射式の実体顕微鏡などの機構の異なる顕微鏡で同様の手法が適用可能かどうかを試す予定である。
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