研究実績の概要 |
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃粘膜に持続感染する。ピロリ菌感染により、胃炎・胃潰瘍・十二指腸炎や胃がんを発症することが知られている。現在では抗菌薬を使用した除菌が主流であるが、薬剤耐性ピロリ菌(特にクラリスロマイシン耐性)の増加で除菌が困難となり問題となっている。そのため、新規の治療法の開発が急務である。 ファージ療法とは、バクテリオファージの溶菌活性を利用した感染症治療法である。より優れた治療用ファージの創出には細菌への感染効率を上げることが重要である。感染効率の向上には、ファージの宿主菌への吸着が第一義的に重要であるため、その機構を詳細に理解する必要があると考えた。 我々はピロリ菌に感染するファージKHP30 を世界に先駆けて分離し、KHP30 を利用したファージ療法の研究開発を行ってきた。本研究では、薬剤耐性ピロリ菌に対するファージ療法の研究開発を目指して、KHP30 構造情報を基にして、ピロリ菌ファージの吸着機構を研究する。はじめに申請者はKHP30 の構造情報から、吸着に関与するタンパク質(Gp12,Gp15,Gp25)を予想した。次に大腸菌タンパク質発現系を利用して、KHP30 のGp12,Gp15,Gp25 の組換えタンパク質の作製を試みた。しかしながら、一部不溶化タンパク質となり組換えタンパク質の精製が困難であった。現在、GSTタグ融合タンパク質の作製を行っている。今後は、組換えタンパク質の精製後、ピロリ菌に対する吸着性の検討を行なう。
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