研究実績の概要 |
ジルコニアとレジンの接着試験を行った.具体的には,直径0.2~0.4mmのジルコニア製ビーズの表面をフッ化水素酸にて粗面化させた.また,シリカ系セラミックスをスプレー噴霧してビーズに担持させた.一方,被着体となるディスク状のジルコニアはサンドブラスト処理のあと超音波洗浄を行い,さらにポーセレンファーネスで熱処理を行った.このディスク状のジルコニアに焼結用陶材を塗布し,その上にジルコニア製ビーズを均等に配置してポーセレンファーネスで焼結させた.この試料の表面にシランカップリング剤を塗布し,通法にしたがってフロアブルレジンを一層築盛した後,前装用レジンを築盛,光重合した.コンポジットレジンは,前装用レジンのみを使用する群(TZ)と,フロアブルレジンと前装用レジンを併用する群(TZ-E)を用意した.また,ジルコニア製ビーズを配置せず焼結用陶材のみを焼結したジルコニア試料に前装用レジンを築盛し,光重合した群をASとして用意した.せん断試験を行った結果,AS と TZ,TZ-Eの間には有意差が認められたが,TZ と TZ-Eの間には有意差が認められなかった.フロアブルレジンの有無にかかわらず,ジルコニア製リテンションビーズの付与によってジルコニアフレームと前装用レジンの接着強さが向上した.また,走査型電子顕微鏡で破断面の観察を行った結果,ビーズ同士の隙間に生じた微小なアンダーカットにレジンが嵌合していることが観察された.これにより,せん断接着強さが向上したのではないかと推察される.フロアブルレジンは前装用レジンより流動性が高いため,ビーズ同士の隙間に流入しやすくなりせん断接着強さが向上することが期待されたが,前装するレジンの物性の違いは接着への影響が小さかったと考えられる.
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