有線での直接接続が難しい拠点間の通信においては,無線通信にて拠点間接続を行うことが可能であるが,降雪地の冬季では悪天候時の伝送遅延や安定性が懸念される.一方,ミリ波を使用する機器では伝送速度・遅延共に有線 LAN に匹敵する性能で接続可能な比較的安価な製品が出てきている.教育研究活動においては,より高速広帯域の無線 LAN を利用できる環境が求められてきていることから,実際にキャンパス内の有線での直接接続が難しい施設をミリ波の中でも届出・免許不要で運用できる 60GHz帯ミリ波無線設備で接続し,利用者にキャンパス無線 LAN 接続環境を試験的に提供しながら,その実効性を検証した. 検証は700m離れたキャンパス内の2拠点間を接続して行ったもので,検証期間中の気象庁の観測によれば最低気温-26.9℃,日最大積雪量は35cmを記録したが,接続性の安定確認のためおこなった動画ライブ配信においては271日間停止することなく配信を継続することができた.また,実際のサービス運用における検証においても,60GHz帯ミリ波をバックボーンに使用した遠隔拠点に設置したOpenRoaming基地局に対しクライアントは安定してPasspointによる接続開始の試行ならびにIEEE802.1Xの認証が安定して行えることが確認できた. これにより,降雪地の冬季においても,着雪対策が施された製品であればミリ波による拠点間通信をバックボーンに用いたキャンパス無線LAN環境の構築が可能であり,実用的に運用できることを示した.
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