【研究目的】 署名照合は、筆者固有の書き方に着目した署名からの個人認証法であり、近年のグローバル化や押印見直しによる署名利用増加に伴い、オンライン署名の偽筆対策は喫緊の課題である。しかし、オンライン署名の偽筆対策として、従来、生体認証分野では他人偽筆を主対象とする一方、法科学分野では本人偽筆(韜晦偽筆)を主対象とする等、分野毎でターゲットとする偽筆が異なっており、各分野をまたいだ包括的な偽筆対策と、その実践応用については、未だ検討が不十分であった。そこで本研究は、最近のペンタブレットの多くが、実画(端末表面に実際に書かれる署名のペン軌跡)に加え、空画(端末上から一定範囲内で検知される実画間の空中ペン軌跡)も検出可能であり、その空画が偽筆者に不可視の無形画線である点、書字習熟度に深く関連する点に着目し、実画と空画を併用したシングルテンプレートマッチング法を新規構築するとともに、これを筆跡鑑定用フレームワークに発展させることで、オンライン署名の包括的な偽筆対策と実践応用について総合的検討を試みた。 【研究方法】 本研究では、各種偽筆に対し、実画と空画を併用したシングルテンプレートマッチングにより照合する。まず、登録フェーズでは、参照署名セットに対して前処理・特徴抽出後、参照署名セットから各特徴の平均テンプレート群を生成する。認証フェーズでは、入力署名に対して前処理・特徴抽出後、対象者の平均署名テンプレート群とテスト署名間でシングルテンプレートマッチングを適用して距離指標を計算し、各ユーザの閾値との比較により判定を行うオンライン署名照合法を構築した。 【研究成果】 本提案手法の有効性を評価するため、法科学分野の署名データセットを用いた実験により有効性を検証した。その結果、オンライン署名照合において、実画と空画を併用する本提案手法の偽筆対策と実践応用への有効性を確認した。
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