研究実績の概要 |
量子誤り訂正の理論は1990年代から研究されているが、従来型ではない量子挿入/削除誤りが注目されはじめたのは2020年以降である。初めての量子挿入誤り訂正符号は2021年に与えられた4量子ビット符号であり、その後もいくつかの例が考案されてきたが、最初に与えられた4量子ビット符号を含むような符号族は発見されておらず、3年もの間ユニークな例として考えられてきた。 本研究では、4量子ビット符号に新しい複号アルゴリズムを与えることによって、その一般化を行い、まだ知られていない新たな挿入符号族を構成することに成功した[1]。これらの符号はそれまで単一量子削除符号として知られており,本研究によって単一量子挿入誤りに対しても訂正可能であることが判明した。 古典論においては挿入符号と削除符号の同値性が示されているが、量子論において同等の性質が成り立つかどうかは現在までに示されていない。その解明の足がかりとして、粒子数が変化するような誤りの訂正のための必要十分条件をシンプルに記述することが期待されている。本研究において、その解明の糸口が見出されたと言える。それは、今回提案した新しい復号アルゴリズムをさらに一般化することで、量子挿入/削除誤りを訂正するための手続きを一般的に書き下すことが可能であるからである。 [1]Taro Shibayama. A generalization of the four quits single insertion error-correcting code. IEICE Communications Express, 13(4):126-129, 2024.
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