研究課題/領域番号 |
23H05442
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 和貴 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451491)
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研究分担者 |
永岡 賢一 核融合科学研究所, 研究部, 教授 (20353443)
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80552661)
江本 一磨 筑波大学, 数理物質系, 特任助教 (10967227)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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キーワード | 磁気ノズル / 高周波プラズマ / 電気推進 / プラズマ揺動 / 電子反磁性効果 / ヘリコンスラスタ |
研究実績の概要 |
2023年度は,本研究におけるプラズマ離脱現象の検証や,宇宙空間を模擬した条件での推進機性能評価に使用する直径1.5m,長さ4m程度の真空容器を有するSPT-X装置の建設を進め,真空排気設備等の整備を実施し,10-4Paの高真空を得ることが出来た.またプラズマ流評価に使用する3軸プローブ駆動系を真空容器内に設置し,次年度以降のプラズマ詳細計測を実施可能な状態とした. また既存のMega-HPT装置において磁気ノズル中の電場および密度揺動計測を実施し,これらのクロススペクトル解析を実施したところ,40kHz帯のコヒーレントな揺動が電子の内向き輸送を誘起していることを明らかにし,磁気ノズルからのプラズマ離脱現象に有用な輸送現象を誘発していることを示した.また,Mega-HPT装置内部に25チャンネルプローブアレイを導入し,揺動の二次元構造を構築可能な信号を収集し,次年度以降のデータ解析に必要なデータを得た. 推進機性能評価においては,ソレノイドを用いたカスプ磁場をプラズマ発生部に形成することで推進性能30%を得ることに成功し,この性能向上が,磁場構造に起因するプラズマ損失の抑制によるものであることを示した.一方で,ソレノイドコイルに要する電力が将来的に問題になるため,永久磁石を用いたカスプ磁場形成に関する設計・試作を行い,小型実験装置において試験的な実験を行った. また,磁気ノズル中の電子反磁性効果のみによって推力が発生するのかという学術的な問いに対し,電場を排除した実験系を構築し,反磁性磁場の精密計測と電子エネルギー確立関数の計測を行ったところ,僅か数%の高エネルギー電子が反磁性効果の主要な役割を担っており,さらにその効果によって推力が発生することを実験的に実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って,SPT-X装置の整備と性能向上に関する実験を進めており,現時点で最高性能である推進効率30%が安定して得られるようになっており,さらに永久磁石を用いたスラスタ試作や試験運転を実施している.また,基礎的な実験も実施し,磁気ノズル効果に関して,高エネルギー電子による反磁性効果による推力発生が主要な推力発生源であることを実験的に実証できた.以上の状況を鑑み,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に建設したSPT-X装置において,20kW級の高周波電源や計測系および推力評価装置を導入し,推進機の大電力化と推進性能評価を進める予定である.また高性能化に関しては,直径14cm級の大口径スラスタを試作し,性能評価を進める.所望の性能が得られない場合には,プラズマパラメータ計測や高周波電磁場計測によってエネルギー吸収・損失の特性を検討し,その知見を基に高性能化へと挑戦する. また揺動が誘発する電子輸送現象に関しては,揺動の断面分布を評価可能な信号を収集したため,このデータ群を解析することで,揺動構造の同定や輸送特性の評価を実施する. さらに本スラスタの技術展開として,宇宙ゴミ除去用装置としての技術展開を検討しており,そのための基礎実験も並行して推進することを検討している.
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