| 研究課題/領域番号 |
23H05459
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| 研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 潤児 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (40227905)
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| 研究分担者 |
吉田 靖雄 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (10589790)
有賀 克彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (50193082)
武安 光太郎 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90739327)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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| キーワード | 窒素ドープカーボン / 触媒 / 燃料電池 / 酸素還元反応 / 水素 / カーボンニュートラル / 非白金触媒 / スピン |
| 研究実績の概要 |
窒素ドープカーボン触媒の普及を阻む活性低下の問題に関して、そのメカニズムを解明し、さらにその理解に基づく触媒開発が本プロジェクトの主眼である。2つの大きな成果の内の第一は活性低下メカニズムの理解が格段に進んだことである。すなわち、1,10フェナントロリンをモデル触媒として用いた実験において、我々が提唱する「pyri-NH+の還元と酸素分子の吸着の連動反応」を実験的・理論的に示したことである。実験では、電解質のpHをパラメターとして、酸素還元反応を行い、反応後のピリジン型窒素 (pyri-N)の状態およびO2吸着について、XPS実験とDFT計算を併用して詳細に解析した。その結果、i) 電気化学的pyri-NHの生成反応とO2吸着の連動反応がどのpH領域でも起こることと、ii)酸性生成電解質におけるピリジン型窒素のプロトン化が活性低下を引き起こすことが明らかとなった。第二の大きな成果はスピンと酸素還元反応の関係を明らかにした点である。五員環を導入したカーボン触媒のORR触媒活性、スピンおよび酸素吸着の関係を調べた。5員環含有カーボン触媒は、フラーレンを出発物質として、NaClテンプレートやEDA凝集剤を用いて、キューブ状で高表面積を有する構造体として調製した。この触媒は高いORR活性を示し、窒素をドープせずとも、5員環を導入することにより触媒活性が発現することが明らかとなった。さらに、この5員環含有カーボン触媒のスピンをESRとMPMS(Magnetic Property Measurement System)で測定した結果、スピンの量とORR活性の間に相関が認められた。DFT計算の結果、このスピンの存在によってO2分子の吸着が進行するため、ORR触媒活性が発現することが明らかとなった。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題申請時の目標に照らすと研究は順調に進展している。研究目標はカーボン触媒の学理構築であり、そのポイントは、「pyri-NH生成とO2吸着の連動反応を詳細に調べること」であり、そこを基軸として、スピン分布と酸素吸着を含むメカニズム解明、3次元触媒構造制御による高活性触媒の開発および酸素還元反応の他にCO2還元反応についての検討という研究項目となっている。まず、pyri-NH生成とO2吸着の連動反応については大きな成果が挙がりpH依存性を調べるアプローチによってメカニズムの詳細を実験的および理論的に解明した(Angew. Chem. Int.Ed.2025に掲載許諾)。次に、五員環含有カーボン触媒を用いて、スピン分布と酸素吸着の関係を明らかにした。その結果をする論文を2024年にAngew. Chem. Int.Ed.で発表し、さらに、今後の展開に期待する意向を持って総説にまとめた(Small Methods 2025に掲載許諾)。さらに、五員環含有カーボン触媒と窒素ドープカーボン触媒におけるスピンに関するDFT研究で進展があった。STMおよびSTSを用いたモデル触媒においても順調に研究は進捗し、国内で初めて開発するESR-STMの立ち上げも順調に進めている。3次元構造を制御した高活性カーボン触媒の構築については、フラーレンを出発物質として高活性な五員環含有カーボン触媒を調製した。さらに、カーボン触媒のCO2還元への応用が可能であることが明らかとなった。すなわち、混成電位駆動型メカニズムでCO2の還元によってギ酸が生成することを見出した。さらに、混成電位駆動型触媒メカニズムの理論構築を達成した。この点も大きな進捗であった。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は「カーボン触媒の学理構築」を素過程レベル・電子レベルの解析へと深化させるとともに、酸素還元反応の逆反応である酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction:OER)や、CO2還元反応の研究をより詳細に調べてゆく計画である。本プロジェクトの主眼は学理構築ではあるが、実用に供する触媒開発をより意識して研究を行っていく。具体的には、i)スピンに関する実験的・理論的研究を展開する。特に、スピンと酸素吸着エネルギーおよび酸素還元反応活性との関係を明らかにする。ii)モデル触媒およびESR-STM(またはSTS)による原子レベルでのスピン検出を試みる。また、CARSおよび分光全反射偏光NEXAFSのオペランド測定によって反応中間体を直接検出し活性点を特定する。iii)OERに対するカーボン触媒の反応特性を調べる。iv)高性能な五員環含有カーボン酸素還元触媒の開発する。フラーレンを出発物質として、多様な構造の五員環含有カーボン触媒を調製する。特に、エッジを多数有するカーボン粒子の調製や、五員環をジグザグエッジに局在化させる手法の確立に注力する。v)MOFOF (MOF on Fullerene) という新カーボン物質を開発し触媒応用を試みる。また、N2プラズマを用いたグラファイト型およびピリジン型窒素種の精密ドーピングを行い触媒の高性能化を目指す。vi)高圧CO2/H2反応に対するカーボン触媒の特性評価を評価する。vii)カーボン触媒を用いてCO2/H2Oからギ酸またはアルコールを合成する触媒探索を行う。カーボンと酵素(formate dehydrogenase:FDH)を組み合わせた触媒系の探索を行う。viii)混成電位型メカニズムの理論をさらに展開させる。生体系電極触媒である酵素における混成電位駆動型メカニズムの解析および熱産生メカニズムの解析を進める。
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