研究課題/領域番号 |
23K00013
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
吉川 孝 甲南大学, 文学部, 教授 (20453219)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アーカイブ / ポルノグラフィ / 映画 / ブルーフィルム / 土佐のクロサワ |
研究実績の概要 |
本年度は、山形ドキュメンタリー映画祭2023・オフィシャルコラボイベント 「小型映画アーカイブナイト」にて「見てはいけない映画 ブルーフィルムのアーカイブ 」、神戸発掘映画祭2023連携企画 「見てはいけない映画のアーカイブを考える」にて「オーファンフィルムとしてのブルーフィルムーー神戸と土佐のクロサワーー 」を発表した。さらに著作『ブルーフィルムの哲学 「見てはいけない映画」を見る』(NHK出版)を公刊した。そこでは、1980年代にアダルトビデオが普及する以前の日本におけるハードコアポルノである「ブルーフィルム」の歴史や文化史的意義などを明らかにした。この著作では、ブルーフィルムが刑法第175条ゆえに上映できない映画のジャンルであることが確認され、そのために、作品そのもののアーカイブがなされにくくなっていることが明らかになった。ブルーフィルムにおいては、作品そのものだけではなく、宣伝の資料や上映の状況なども基本的には残されることはなく、通常の映画研究をすることも困難である。さらには、出演者や製作者の証言もほとんど残されておらず、制作現場の状況を把握することも難しい。土佐のクロサワと呼ばれる著名な製作者の証言などは例外的に残されており、貴重な意味を持っている。しかし、出演者の証言はほとんどなく、制作現場の状況などを把握して、倫理的問題を検討することも困難である。しかしながら、現代でもブルーフィルムについて検討することができるのは、実際のフィルムがわずかながらも残されていたり、野坂昭如や藤本義一のような作家がブルーフィルムを題材にした小説やエッセイを書き残したり、伊勢鱗太朗のような映像作家がブルーフィルムの映像を収集して公開していたりしたからである。このような営みの意義を明らかにしながら、性差別やプライバシーなどの問題を検討することが課題として残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究発表を2回行ったほか、著作を刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
著作『ブルーフィルムの哲学 「見てはいけない映画」を見る』では、ブルーフィルム全般を紹介して、そこで哲学の観点から考察できる問題を扱っていたため、アーカイブに特化していたわけではなかった。今後は、アーカイブという論点に特化した研究に取り組んでいくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の出版を中心とした研究をおこなったので、新たな調査のための旅費の支出が少なくなった。
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