研究課題/領域番号 |
23K00014
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
佐藤 岳詩 専修大学, 文学部, 教授 (60734019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | メタ倫理学 / I.マードック / R.M.ヘア |
研究実績の概要 |
令和5年度は、事実と価値の関係についての新しい見方を検討すべく、アイリス・マードックの道徳哲学を中心とした検討を行った。その際、ケアの倫理とマードックのメタ倫理学を接続することで、ケアの倫理とケアの倫理の双方の可能性を拡充することを試みた。特に、ケアの倫理の出発点となった、ローレンズ・コールバーグとキャロル・ギリガンの論争では、多分にメタ倫理学的な発想が背景に含まれていること、またネル・ノディングズのケアの倫理はマードックやシモーヌ・ヴェイユのメタ倫理学的な発想に多分に影響を受けていることを示すことによって、規範倫理の一分野として扱われることの多かったケアの倫理をメタ倫理学の視点から捉え直すことを試みた。これによって、本研究課題の目的である、より広範な倫理学を探究するための一つの足がかりを得ることができたと言えよう。また、マードックの論敵であったリチャード・ヘアの議論を、あらためて、カント主義との関係で検討する研究発表を行い、それによって、20世紀半ばのオックスフォードの道徳哲学の状況を整理するとともに、メタ倫理学がどのような文脈で何を目指して展開されてきたのかということを明らかにすることを試みた。そこでの成果として、ヘアは、情動主義に対抗するためにカント主義に接近したが、情動主義が実質的道徳を批判したことは引き継いでおり、そのために、形式的な道徳にこだわり、それが結果としてカントからの距離を生んでいると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は20世紀中盤にかけての検討を中心的に行ったため、令和6年度は20世紀後半に注目して、これまでのメタ倫理学の歴史を精査し、倫理学理論の拡大の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会出張を取りやめたため。令和6年度、別の学会に参加することで使用する予定である。
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