研究課題/領域番号 |
23K00018
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
千葉 清史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60646090)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | カント / 超越論哲学 / 実在論論争 / 知覚の哲学 / 国際共同研究 |
研究実績の概要 |
2023年度は、まず(私の反実在論的解釈の最大のライヴァルとなると思われる)Lucy AllaisならびにTobias Rosefeldtの「形而上学的二側面解釈」(これは超越論的観念論の実在論的解釈の現在最有力な選択肢であると思われる)を、分析知覚論ならびに色の理論から再検討する、という作業を進めた。この問題は、以前に従事した科研費研究(基盤(C) 20K00017:「反応依存性理論を用いたカント的実在論の展開」)で十分な準備ができているかと考えていたが、進めてみると、以前の研究では見えていなかったさまざまな問題が表面化してきた。たとえば、AllaisとRosefeldtの解釈上の立場を分析する際に用いる予定だった「反応依存性」の適切な定式化に関する問題は、予想以上の困難を抱えていることが見てとられた。また、AllaisとRosefeldtの解釈を評価する際には、両者がアナロジーのために主に用いる色についての理論の評価が不可欠であり、これについても色についての現代の諸理論との突き合わせの必要性がわかってきた。こうした諸問題についての取り組みは2024年度にも継続していくことになる。 また、並行して、「超越論的観念論」解釈に関する2012年以降の(すなわち拙著:Kants Ontologie der raumzeitlichen Wirklichkeit執筆時にはまだ確認されていなかった)研究文献を、英語圏・ドイツ語圏に関して収集する、という作業に着手した。しかし、上述の課題にかなりの時間をとられた結果、この作業の進捗状況は思わしくない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Lucy AllaisとTobias Rosefeldtの(カント「超越論的観念論」についての)「形而上学的二側面解釈」の検討・評価のための準備に思いのほか時間がかかり、予定していただけの成果を残すことができなかった。これに伴い、2012年以降の文献調査に関しても、捗々しい成果を上げることはできなかった。また、国内外の研究者を招聘した研究会・シンポジウムを開催することもできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、AllaisとRosefeldtのの「形而上学的二側面解釈」を分析知覚論ならびに色の理論から再検討する、という作業にまず一区切りをつけるところまで進め、現状までの成果を研究発表あるいは論文の形で公表することを目指す。また、2023年度には十分に進めることができなかった、2012年以降の関連文献の収集を進める。さらに、(応募時点の計画で2024年度に予定されていた)2012年以降に提案された「現象主義的解釈」(これは私が「反実在論的解釈」と呼ぶ物の一例と考えられる)の例として、特にNicholas StangとAnja Jauernigの研究を検討する、という作業を時間の許す限り進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務校での学務や諸業務に追われ、もともと計画していた海外開催の大会・研究会への参加ができなかったことによる。 使用計画:2024年度には、世界各国において、イマヌエル・カント生誕200年記念の大会・研究会が開催される。それに参加するための旅費にあてる予定である。また、可能であれば、国内外の関連する研究者を招聘した公開研究会・シンポジウムを開催していきたい。
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