研究実績の概要 |
「行く」(ay, gaa),「見る」(paz, drz),「見る」(caks, khyaa),「殺す」(han, vadh),「光る」(dyot, roc)など,これまで知られている13の動詞補完を整理し,概要把握のために各動詞補完のパラダイム内における分担関係について予備調査を行った。これまで調査を行ってきた「与える」(daa, pra-yam, raa)について,改めてリグヴェーダ,アタルヴァヴェーダ,黒ヤジュルヴェーダ(マイトラーヤーニー・サンヒターなど),ブラーフマナ文献,シュラウタスートラの用例を分析した。当該動詞補完を時代・文献ジャンル(マントラと散文)別の用例分布,パラダイムレベルの分担関係,アスペクト,結合価構造などの点から検討し,考察を進めている。pra-yam「差し出す」の現在語幹pra-yaccha-ti の用例が増加するのはリグヴェーダ10巻以後であるが,補完関係にあるとされる現在語幹dadaatiとpra-yacchatiだけでなく,root aor. (a)daa-, pra-(a)yam-などのアオリスト語幹とも比較しながら調査を進めている。現時点では両者の用法上の区別については見出せないケースが多いものの,pra-yaccha- が特定の文脈で現れる可能性を考慮に入れつつ検討中である。10月頃までに調査・考察の結果をまとめ、学会発表の準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
先ずは「与える」(daa, pra-yam)の調査結果を学会において発表する予定である。その後、当初の予定を若干変更し、「行く」(ay, gaa),「殺す」(han, vadh),「光る」(dyot, roc),「落ちる」(zad, ziiy),「走る」(dhaav, sar),「走る」(drav, dram, draa),「眠る」(svap, sas)の順に調査を進めていく予定である。
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