研究課題/領域番号 |
23K00059
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 教授 (40709135)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ジターリ / ラトナーカラシャーンティ / 外遍充 / 内遍充 |
研究実績の概要 |
研究初年目の2023年度、10月下旬より11月上旬まで約3週間、本研究の海外協力者であるライプツィヒ大学所属のJunjie Chu博士が来日し、博士と共に、本研究で取り組む、ジターリの3著作のうち最も長大かつ重要である『クシャナバンガ・プラカラナ』の翻訳共同研究に着手した。翻訳にあたっては、博士が作成した暫定的なクリティカル・エディションを基礎とし、博士の滞在中に、本作の前半部を構成する前主張部を読了、その暫定的な英語訳を完成させた。また、博士の作成したクリティカル・エディションの文献学的な評価も行った。その結果、本作は、刹那滅論をめぐる、仏教徒と非仏教徒との論争を取り扱った著作ではなく、刹那滅説を如何にして証明するかという、その証明方法をめぐる、仏教徒内部の対立、内輪揉めを取り扱った著作であることが明確になった。本作でジターリはいわゆる異端説を斥け、正統説を堅守することに全力を注いでいる。 また、12月に開催されたインド思想史学会においては、ジターリの小著『クシャナバンガ・シッディ』の影響を色濃く受けたことが間違いないであろう、ラトナーカラシャーンティの著作『アンタルヴィヤープティ・サマルタナ』を、文献学的、そして、思想史的に再考する研究発表を行った。そこでは、『アンタルヴィヤープティ・サマルタナ』は、今一度、その文献学的な基礎研究が試みられる必要がある作品であることを主張し、また、ジターリの言うところの「内遍充」「外遍充」の定義や意味、そして、ラトナーカラシャーンティが述べるところの両概念の定義や意味は異なる可能性が高いことを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライプツィヒ大学のJunjie Chu博士との共同研究が順調にスタートし、また、その進捗状況も満足できるものであったと言える。そして、ジターリが『クシャナバンガ・プラカラナ』と『クシャナバンガ・シッディ』を著述した企図もほぼ明らかになりつつある。 それに加え、ラトナーカラシャーンティの著作に顕著であるように、ジターリが後代の思想家たちに与えた影響もこれまでの研究によって見えつつある。 以上の点から、現在までの研究はおおむね順調に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、ジターリの、これまでのその存在すら知られていなかった諸著作を解読研究するものであり、全くの手探りの状態でスタートした。しかし、1年が経過し、その著作スタイルや、著作の企図といったものが、徐々に見えるようになってきた。それゆえ、2024年度はペースを上げてテキスト解読に取り組むことが可能となることが期待でき、テキスト解読の量を増やして行きたい。また、ジターリが伝える、仏教内部の異端説については、それの出処、主張者が誰かを未だ特定できておらず、その特定に注力する必要がある。そのためには、より広範囲に、思想史上でジターリの前に位置するテキストにあたる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の本研究申請時には、参加・研究発表のなかった国際学術会議への参加・研究発表が2023年度中に急遽決まったので、その出張予算を確保するために、物品購入を控えることによって、次年度使用額を確保することを決定した。この決定をするにあたっては、昨今の円安状況も加味している。
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