研究課題/領域番号 |
23K00074
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高橋 圭 東洋大学, 文学部, 助教 (60449080)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | イスラーム / サードプレイス / モスク / 北米 / コミュニティ / スーフィズム / 若者ムスリム |
研究実績の概要 |
本研究は、近年米国の若者世代のムスリムの間で活発化している、新しいコミュニティの形成運動に注目し、その実態解明に取り組むとともに、この運動を米国ムスリム社会全体の文脈に位置づけて評価することを目指すものである。しばしばサードプレイスと称されるこれらの新しいコミュニティは、既存のモスクとは一線を画し、多様な属性のムスリムが集まることを主眼に置いている点が特徴的である。本研究では、まずこうしたサードプレイスの組織や活動を調査し、事例の蓄積を通じて、この運動を包括的に理解するための枠組みを構築する。そのうえで、この運動が米国ムスリム社会全体の変革において果たす役割や意義の評価を試みる。そしてそこから、最終的には、現代の米国に暮らす若者ムスリムのイスラーム理解や、彼ら/彼女たちが描く「米国ムスリム社会」像の解明を目指す。 令和五年度は、研究体制の確立、先行研究の網羅、文献・インターネット上の資料の調査・分析に取り組んだ。 8月には現地調査に取り組んだ。今回はサンフランシスコ・ベイエリアとロサンゼルスにおいて聞き取り調査や参与観察を実施した。ベイエリアでは、実施者が数年に渡って継続調査を行っているコミュニティ団体であるタアリーフ・コレクティヴ・フリーモントを始めとして、各地のモスクやイスラーム団体での調査、およびこうした団体と関わる関係者への聞き取り調査を実施した。ロサンゼルスでは、特にオレンジ郡アナハイム市とサンタアナ市を中心に、複数のモスクでの調査を実施したほか、サンタアナ市で活動を行うコミュニティ団体であるマジュリスの活動に参加し、参与観察や聞き取り調査を実施した。 研究成果については、調査初年度にあたることもあり、当該年度はまとまった成果を公開することはできなかった。ただし、その準備は進めており、令和六年度に論文や口頭発表の形での公開を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和五年度は先行研究の網羅、文献・インターネット上の資料の調査・分析に加えて、約一か月間アメリカ(サンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス)での現地調査を実施し、そこで様々な情報や示唆を得ることができた。研究成果については、年度内にはまとまった成果を公開することはできなかったが、すでに2本の論考を執筆しており、令和六年度中の刊行が予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
令和六年度も引き続き文献・インターネット上の資料の調査・分析とアメリカでの現地調査を実施する。当該年度はサンフランシスコ・ベイエリアでの継続調査に加えて、シアトル市で調査を行う予定である。また、時間的な余裕があれば、シアトル市の調査と同時にカナダのヴァンクーヴァー市でも調査を行う。研究の経過は口頭発表や出版物として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査初年度の研究体制の整備のために、令和六年度はパソコンやプリンターなどの購入を見込んでおり、そのための物品費を多めに計上したが、さしあたり既存の機器で対応可能であると判断したため、新たな機器の購入を行わなかった。また現地調査での謝金の支払いの可能性を考慮して人件費・謝金にも一定額を割り当てたが、当該年度の調査ではそうした事態は発生しなかった。 次年度は機器の劣化に伴う買い替えの必要が生じる可能性もあるため、その場合に備えて物品費を引き続き計上予定である。また近年特に海外調査に関わる費用(航空券代、宿泊費、食費、交通費など)が急激に高騰しており、当該年度は旅費が予算を大幅に上回る結果となった。次年度も同様の事態が生じることが見込まれるため、次年度使用額をこれに充てる予定である。
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