研究課題/領域番号 |
23K00088
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
乗松 亨平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40588711)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 精神圏 / ヴェルナツキー / ロシア宇宙主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、佛教大学図書館、北海道大学図書館、ハーヴァード大学図書館などで、本研究課題の基礎となる研究資料(雑誌『科学と宗教』『自然』ほか、後期ソ連におけるヴェルナツキーの受容に関わる資料)を調査・収集したうえで、その読解・分析を進めた。 成果発表としては、ヴェルナツキーなどの「ロシア宇宙主義」をテーマに含む上海ビエンナーレで招待講演を行うなどした。また、ボリス・グロイス編『ロシア宇宙主義』の翻訳で監訳者を務めた(刊行は2024年度)。 とりわけ、後期ソ連においてヴェルナツキーを独自に発展させた事例として、歴史学者レフ・グミリョフと、応用数学者ニキータ・モイセーエフの著作を検討し、北海道大学スラヴ・ユーラシア研究センターで報告を行った。彼らはそれぞれの仕方でヴェルナツキーを解釈しているが、解釈が分かれるポイントとして、ヴェルナツキーが自然環境について、人間が意志的・能動的に制御できるものと考えていたのかどうかという問題がある。「生物圏」から「精神圏」が生じるプロセスについて、ヴェルナツキーは、人間の意志とは無関係に進展する自然過程と述べる一方で、この過程を人間が統御することの必要性を訴えてもいた。これは「精神圏」がモデルになったともいわれる、現在の「人新世」に関しても問題にされることである。グミリョフとモイセーエフはそれぞれ、自然環境の統御可能性を否定した極と肯定した極を代表している。今後、この問題軸に沿って、後期ソ連におけるヴェルナツキーの受容をさらに分析するとともに、西側における「精神圏」概念の展開にも同様の視覚からアプローチしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要な一次資料の調査・収集、ヴェルナツキーをめぐる思想史的文脈(特に「ロシア宇宙主義」に関わるもの)の検討など、本研究課題における基礎作業をおおむね終了した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、「ロシア宇宙主義」に関する研究成果を日本語でまとめ、2025年度には、本課題の研究成果を英語で発表する予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際情勢が改善すればロシアでの資料調査を予定していたが、それが可能な情勢にはならなかったため、来年度以降にロシアあるいは別の国での資料調査を行う。
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