• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

メレオロジーの成立と展開に関する思想史的研究:フッサールとホワイトヘッド

研究課題

研究課題/領域番号 23K00095
研究機関中央学院大学

研究代表者

齋藤 暢人  中央学院大学, 現代教養学部, 教授 (70339646)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードメレオロジー / フッサール / ホワイトヘッド / 形式的存在論 / 出来事存在論 / メレオトポロジー / ブレンターノ / パース
研究実績の概要

2023年度は、フッサールのメレオロジーの哲学的背景について研究した。
フッサール『論理学研究』の思想史的背景をなすブレンターノのメレオロジーを研究し、論文「色と延長」(『中央学院大学現代教養論叢』6/1)を公表した。ブレンターノのメレオロジーはアリストテレス研究の一環であり、存在の分析である。その一般性から、同時代のパースのカテゴリ論との内的連関が示唆される。また、『論理学研究』からのフッサール現象学の発展を追い、論文「表現としてのノエマ」(『中央学院大学現代教養論叢』6/2)を公表した。フッサールのメレオロジー研究はギュルヴィッチらのゲシュタルト心理学を生み出したが、この思想史的文脈に注目すると、フッサールの超越論的現象学の成果であるいわゆるノエマ論をメレオロジーの文脈の中でとらえなおすことが可能となり、現象学を形而上学としてとらえなおすことも可能となる。
メレオロジーの技術的な側面に関しては論文「基づけと位相」(『中央学院大学人間・自然論叢』55)「メレオトポロジーと名辞様相」(『中央学院大学人間・自然論叢』56)を公表した。前者においては、フッサールのメレオロジー、基づけの理論を一般化することを試みた。また、後者においては、基づけ概念をも包括する論理的基盤であるメレオトポロジーの諸概念の体系的な分析を試み、基本概念の相互関係を確定した。
また、メレオロジーに関連する様相論理の思想史的研究の一環として論文「偶然性について」(『論理哲学研究』13)を公表した。位相幾何学、様相論理学の揺籃期の概念を整理することにより、メレオロジー、メレオトポロジーの観点からみても極めて重要な論理学的諸成果を再発見し、整理することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究初年度である2023年度は、学会誌に1本、学内紀要に4本の論文を成果として公表することができた。フッサールの初期哲学はブレンターノ形而上学の改定として理解できることを明らかにすることができたが、あわせてパースとの関連も明らかになったことは収穫であった。また、メレオロジーがフッサール現象学の発展段階においても重要な役割を担っていることも解明できた。技術的な側面に関しても、基づけの理論の一般化とその論理的基盤の解明ができ、また、様相論理と位相幾何学の思想史的起源に関して成果を出すことができた。これによってフッサールの思想を論理思想史のなかでとらえる準備ができた。

今後の研究の推進方策

研究二年目となる2024年度は、「フッサールのメレオロジーと論理思想」について研究する計画であったが、基本的にはこの方針に変更はなく、当初の計画通りに研究を進めてゆくこととする。フッサールのメレオロジーを当時の論理思想の発展史のなかに位置づけ、その本質を明らかにすることを目標とする。近年公刊された、フッサールの論理学に関連する講義のなかには、内容的にメレオロジーと関連が深いシュレーダーの論理を扱うものが存在する。これらの素材およびテーマに関しては優れた先行研究が蓄積されており、そうした文献を解析しつつ、フッサールの思想の独自性を明らかにしてゆきたい。具体的には、Ettore CasariやStefania Centroneらの研究が水準の高いものとして存在しており、彼らの議論を検討しつつ、自らのアイディアを提示することを目標とする。Casariによって提案された欠損代数defect algebraは、フッサールの基づけ概念のアイディアを生かしつつ、それを整理・発展させた興味深い論理的成果であると考えられる。私自身がこれまで研究してきたことを踏まえるならば、これはメレオロジーと位相幾何学の双方の視点からとらえるべきものであり、諸概念の論理的相関が明らかになれば、思想史的にもいくらか意義のある貢献をなしうると予想している。こうした諸課題の解決を通じて、フッサールの論理思想のなかからメレオロジーがいかに生み出されてきたのかを、当時の論理思想を背景として明らかにしてゆくこととする。

次年度使用額が生じた理由

本年度は研究開始にあたり、基本的な資料の準備に予算を充当した。結果的に若干の残金が生じたが、これを以て次年度の資料の用意、発表の謝金などに充当する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 表現としてのノエマ2024

    • 著者名/発表者名
      齋藤 暢人
    • 雑誌名

      中央学院大学現代教養論叢

      巻: 6巻2号 ページ: 1-25

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] メレオトポロジーと名辞様相 ー様相対当の再検討-2024

    • 著者名/発表者名
      齋藤 暢人
    • 雑誌名

      中央学院大学人間・自然論叢

      巻: 56 ページ: 17-37

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 偶然性について2024

    • 著者名/発表者名
      齋藤 暢人
    • 雑誌名

      論理哲学研究

      巻: 13 ページ: 44-61

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 色と延長2023

    • 著者名/発表者名
      齋藤 暢人
    • 雑誌名

      中央学院大学現代教養論叢

      巻: 6巻1号 ページ: 1-26

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 位相と基づけ2023

    • 著者名/発表者名
      齋藤 暢人
    • 雑誌名

      中央学院大学人間・自然論叢

      巻: 55 ページ: 15-34

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi