本年度は、『ウエツフミ』の諸本調査を天理大学附属図書館、東北大学図書館、国会図書館、大分大学図書館で行った。 まだ、調査途中のため、諸本調査の結果は、来年度に報告する予定である。『ウエツフミ』以外の神代文字についても考察を行っており、その成果は、「『神明帰佛編』におけるアマテラスの性別について」(『東大阪大学紀要』2024)にて触れた。これは、『ウエツフミ』同様、神代文字で書かれている『ホツマツタエ』の解説書、もしくは神代文字の注釈書的な役割を果たす『神明帰佛編』に書かれているアマテラス像について分析したものである。ここでのアマテラスは、記紀神話には見られない、妃を12人もっている男体として登場している。 アマテラスを男体とするのは、中世神話の影響と考えられる。それは、中世神話では、男性だったり、女性だったり、両性具有だったりと、アマテラスの性別は曖昧である。これは、アマテラスのみではなく、他の尊格にもみられるため、中世においては、神の性別がニュートラルであった。この神の性別の曖昧性に着目したのが、『ホツマツタエ』や『神明帰佛編』と考えられる。その理由は、日本のはじまりが、女性によって支配されたくないという男尊女卑的な考えに基づいていると分析した。
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