研究課題/領域番号 |
23K00114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40431879)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 遊び / ゲーム / メタゲーム / メタゲーミング / ゲーム研究 / ゲームスタディーズ |
研究実績の概要 |
本研究課題「遊びとゲームの創造的機能についての美学的考察:メタゲームの事例を手がかりに」の目的は、遊びとゲームがもつ創造的機能の内実を、デジタルゲーム文化のなかで近年、脚光を浴びているメタゲームの事象を分析することで、より詳細に解明することである。またそれを通して、今日のメディア環境下で遊びとゲームがもつ文化的・社会的・教育的意義を確認し、最終的には、遊びだけでなく、芸術や自己表現をも含む、人間の創造的活動全般についての理解を刷新することを目指すものである。 本研究課題は、令和5年度から7年度までの三年計画で遂行される。研究は、メタゲームの事例分析、理論的枠組みとなる遊戯論の検討、遊びとゲームの創造的機能の考察という順序で遂行される予定である。 初年度である令和5年度には、ゲーム研究の先行文献を参照しながら、分析対象とするメタゲームの事例を調査、収集した。その成果は単著『デジタルゲーム研究』(2023年)第8章「メタゲーム:自己批評するゲーム」および第9章「メディアとしてのゲーム」として公表された。 前者では、ボラック=ルミュー(2015年)があげた四種類のメタゲームを吟味し、「ゲームのなかでのゲーム」と「ゲームをとりまくゲーム」の二つのタイプを考察した。またニューマン(2008年)が「ゲームで遊ぶ」事例としてあげたものや、「カウンタープレイ」(ゲームに逆らって遊ぶこと)と呼ばれている ものなど、他の先行研究も参照しながら、創造性が分析可能な事例を精選した。後者では、メタメディアとしてのコンピュータの特性がいかにデジタルゲームに活かされているかを検討し、エミュレーション、メタフレーミング、ディメイクという三つの実践を分析することで、現代のゲーム文化におけるメタゲームの創造性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年計画の初年度の計画であるメタゲームの事例分析が予定通り達成されたため。
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今後の研究の推進方策 |
三年計画の第二年度である令和6年度には、美学やゲーム研究における遊戯論を検討し、教育学や心理学、人類学における遊びの理論も視野に入れながら、メタゲームを分析するための理論的枠組みを構築する。とくに本研究課題にとって重要なのは、芸術と遊びの創造性の様態を区別したうえで後者の創造性を説明する理論(ショイエル、ノアック、西村)、遊びの本質として「遊戯性」という態度に注目する理論(デューイ、リーバーマン)、遊びがもつ「流用」や「ルール変更」のプロセスを解明する理論(シカール、ベイトソン)などである。 最終年度となる令和7年度には、それまで二年間の成果を統合し、それぞれのメタゲームの形式的特徴やその成立過程を、「遊戯性」「流用」「態度と行為の自己呈示」などの遊戯論の概念を用いて分析し、グルーピングを行う。それを通して、プレイヤーがそれぞれのメタゲームを着想し、構築し、実践するプロセスを解明し、今日のデジタルメディア環境下で遊びとゲームがもつ創造的機能を特定する。そして最終的に、ここで特定された遊びの創造的機能を、芸術や自己表現をも含めた、創造性の一般理論に縫合する。
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