研究課題/領域番号 |
23K00120
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
田鍬 智志 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 准教授 (40351449)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 麒麟獅子 / 競馬 / 端午 / 天台宗 / 蘇芳菲 / 狛龍 / 鳥取藩 / 東照宮 |
研究実績の概要 |
2024年度は、因幡地方(鳥取県東部)の20か所で行われた麒麟獅子のでる祭礼を、調査(撮影・インタビュー)した。 インタビューでは、おもに以下の項目について、地元の方々に質問した。 1)獅子舞の由来。 2)上記に関連して「権現流」と言われている場合、「権現流」とは何をもって「権現流」といっているのか。 3)中断の時期の有無(復活の際、舞、囃子〔特に笛〕はどうしたか?)。 4)現在での神幸行列の有無と由来(過去にやっていたという口碑の有無、ハリボテの馬・武者・大榊〔榊御輿〕の有無、出し物の種類)。5)競馬や流鏑馬を行っていたという口碑はあるか?また、馬場跡はあるか?その他、馬にかんする口碑はあるか? 麒麟獅子は、故野津龍氏が提唱した「池田光仲の東照宮勧請とともに麒麟獅子も創始された」との論説が定説となっていて、日本遺産の選定理由にもあげられている。しかし2023年調査で、鳥取市吉成(百先神社)の歴史有志で作成された郷土冊子に「慶安三年(1650)に鳥取藩主池田光仲公が(省)勧請した因幡東照宮(省)において鳥取藩内から三箇所の神社の獅子舞が奉納(省)吉成の獅子舞も選ばれ」との記述を発見した。これは、光仲の東照宮祭礼創始時には、すでに因幡地方に現行の麒麟獅子と同様の舞が伝承されていたことを示唆し、故野津龍氏の定説を覆しうる口碑といえる。 因幡地方の麒麟獅子のでる祭礼が、宮中競馬節会を継承した上古中世の日吉の小五月会の神幸行列、およびその行列に出た蘇芳菲という擬動物舞の流れを汲むものである、との仮説を検証するためには因幡における馬文化を精査する必要がある。23年調査では、馬に関する口碑をほとんど収集できなかったが、鳥取市山路では、元庄屋宅裏の藪の谷筋がかつて馬場であったこと、また、岩美町大谷の駟馳山はかつて馬の産地で頼朝に献上された名馬生月の伝説が伝わっていることなどを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、因幡地方(鳥取県東部)の20か所で行われた麒麟獅子のでる祭礼を、4名の調査員の協力をえて調査した。因幡地方の麒麟獅子伝承地区はおよそ150ヶ所とされているから、23年度調査件数は7分の1に満たない。調査状況はやや遅れている。 ただ、23年度はまだコロナ禍の影響もあり、祭礼開催を危惧する地区もおおく、その情報が十分に集めることができなかったことが影響している。また調査協力者を充分に揃えることができなかったことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
調査協力者を充分に揃えて、分担計画をたてて現地調査をすすめていく必要がある。2024年度は、ポストコロナ禍で延期していた大祭神幸行列を行う地区が多く見込まれることから、(数年に一度しか行われない)神幸行列を逃さず調査する必要がある。 一方で、麒麟獅子が鳥取東照宮勧請以前から伝承されていたことの典拠をさぐるべく、鳥取市吉成地区の文書調査が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響も残る2023年度は十分な現地調査がかなわず、調査員を充分に揃えることができなかったため。
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