研究課題/領域番号 |
23K00288
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
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研究分担者 |
仁木 夏実 京都府立大学, 文学部, 准教授 (40367925)
大河内 智之 奈良大学, 文学部, 准教授 (20847818)
カスティリョーニ アンドレア 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (70853547)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 偽史 / 山岳信仰 / 金剛山 / 寺社縁起 / 勧進帳 |
研究実績の概要 |
本研究は、偽史の社会的機能を肯定的に捉える立場から、日本の中世において、宗教組織と共同体(地域/都市/国家)との関係のなかで、山岳信仰の偽史を表した言説と書物が、なぜ求められ、どのように現れ、機能したのかを解明するものである。主な研究対象は、鎌倉中期の金剛山の大規模修造事業に関連して作成された文書・勧進帳・縁起、及び葛木の峯々とその山麓における信仰の所産である。葛木の峯々は大和国と河内国・和泉国の境をなし、大峯に比肩する日本で最も神聖な修行の峯であった。そしてその主峯が金剛山であった。 上記の目的のもと、4件のプロジェクトを実施した。プロジェクト1.金剛山の偽史の研究では、新出の『金剛山勧進帳』の分析から、修造事業と『金剛山縁起』との密接な関係を実証するとともに、律宗寺院においても『縁起』に依拠して律宗の宗祖鑑真の伝記の一部が更新され、鑑真の金剛山登攀が史実化されたことを解明した。プロジェクト2.祖師の偽史の研究では、葛木峯の信仰に関する基礎資料を収集した。プロジェクト3. 園城寺光浄院蔵修験道資料の調査では、本組織とは別に専用の調査・撮影チームを設けて、新出資料(200点以上)の調査を進めている。プロジェクト4.日本と欧米の研究史の総括と共通の研究基盤整備では、研究組織内で研究会で、『Defining Shugendo』Introduction(英文、2020)の内容を著者から学び、代表者・分担者の間で修験道研究史に関する基本認識を共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト1.金剛山の偽史の研究では、代表者が研究成果を論文に発表した。プロジェクト2.祖師の偽史の研究では、基礎資料の収集を進めている。プロジェクト3.園城寺光浄院蔵修験道資料の調査では、調査対象の3/4の調査を終え、1/4の撮影を終えた。プロジェクト4.日本と欧米の研究史の総括と共通の研究基盤整備では、代表者・分担者の間で認識を共有し、今後の研究に活かせる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト1.金剛山の偽史の研究では、令和6年度、新出『金剛山勧進帳』を詳細に分析し、その成果を論文で発表する。プロジェクト2.祖師の偽史の研究では、基礎資料の収集を進めるとともに、令和6年度、本研究組織内の研究会で報告を行い、令和7年度、学会等でその成果を発表する。プロジェクト3.園城寺光浄院蔵修験道資料の調査では、令和6年度に全資料の調査と目録化を終える。また、その研究成果の一部を仏教文学会12月例会のシンポジウムで発表する。プロジェクト4.日本と欧米の研究史の総括と共通の研究基盤整備では、令和6または7年度に、欧米の修験道研究史(英語)の内容を日本語での公表する。そして、令和7年度、これらの研究を総括する研究集会を開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の調査を、複数の業務を兼ねる旅行で実施したため、本科研の経費から旅費を支出しなかった。また、国内外の研究会・学会等がオンラインで開催されたため、本科研の経費から旅費の支出が不要であった。
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