研究課題/領域番号 |
23K00335
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 智行 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (50531828)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 中国古典文学 / 翻訳 / 小説 / 明代 / 金瓶梅 |
研究実績の概要 |
中国明代の白話長篇小説『金瓶梅』の新訳ならびに注釈の下巻部分を刊行することを主目的とする本研究課題につき、初年度にあたる23年度には、それ以前にひきつづき翻訳・注釈作業を行い、24年3月までに翻訳ならびに注釈の初稿(合計約68万字)を完成させた。もっとも古くかつ価値のある版本(詞話本、1617年序刊)にもとづく初の個人完訳となる。翻訳にあたっては、各種の校訂や注釈、その他の先行研究などをできるだけ広く参照し、また訳語の前後での統一にも注意を払いつつ、現在の研究レベルを反映し、本文に忠実でありながらも可読性の高い、研究者にも一般読者にも有用な訳文・注釈となるようつとめた。ひきつづき修正、校正や解説執筆作業に入り、25年以降の出版を目指す。このほか23年度においては、下巻部分に引用される宝巻の試訳や、『金瓶梅』におけるセリフを用いた小説表現を考察した論文を公刊した。とくに後者は翻訳の過程において細部まで作品を精読することによって得られた着想にもとづく論文であり、従来おもにその迫真性といった角度からのみ論じられてきた本作品のセリフについて、複数のセリフにまたがる表現機制が見出される点を初めて指摘した。口頭発表としては、東方国際学者会議のシンポジウムにおいて発表したほか、上海で開かれた『金瓶梅』の諸外国語での翻訳をテーマとしたシンポジウムにも参加し、『金瓶梅』の翻訳や海外における同作品受容に関する報告を聞き、自身も報告を行った。また、高知(オンライン参加)で開かれた翻訳と注釈をめぐる公開講座においては基調講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初においては、24年度にひととおり初稿訳了する予定であったが、23年度末までに訳了することができた。とはいえ計画を大きく前倒しできるほど早く作業できているわけではないので、区分(2)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
『金瓶梅』新訳は24年3月までに翻訳・注釈の初稿を完成させたが、下巻だけで68万字の大部の書物となるため、全体の翻訳の手直しや注釈の確認などに、今後1年弱を費やすことが見込まれる。その後、校正と平行して解説執筆を行う予定である。25年には下巻を出版できるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要物品などを購入したが、ごく少額(24円)の次年度使用額が生じたので、次年度交付額にあわせて物品費などとして用いる。
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