研究課題/領域番号 |
23K00362
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
山本 真司 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80434976)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 食文化 / 移民表象 / 新教徒 / リロケーション |
研究実績の概要 |
本研究は、シェイクスピア劇に記録された外国人移入による変化やリロケーションのインパクトを歴史的文化的コンテクストから明らかにするため、食文化表象や、美術や宗教的な観点からの新教徒移民による初期近代英国の社会文化的背景について統合的に考察を進めることが目的である。 本年度は、予定していた3つの観点(①シェイクスピア劇におけるバンケット表象 ②初期近代英国における地域社会や視覚文化 ③新教徒移民による地域社会、経済、文化への影響とその伝播 ④仲介者としてのシェイクスピア劇)から主に①と②の観点に絞って研究調査を進めた。 2023年度前半では、主に研究書籍の購入やインターネット資料の調査収集を実施した。ロンドンとオックスフォードを対比しながら、地域社会や視覚文化などの一次資料を精査することにより、従来関連付けられていないような事例や事件、記録などについて集中的に研究資料の収集を実施した。オックスフォードに関しては主に大学史に関する資料を調査し、移民などの外国人がどのようにアカデミックな組織や地域共同体に受け入れられ、英国人と協働することにより、英国の社会や文化、科学等における様々な発展にどのような貢献をしてきたかについて整理を行った。 2023年度後半については、秋期からの英国での長期出張が不測の事態により困難となったため、まず立教大学図書館シモンズ文庫や早稲田大学演劇博物館においてオックスフォード大学史や地域史関連の研究資料を調査収集した。また、年度末から次年度初頭にかけて短期間渡英し、ロンドンとオックスフォードにおいて現地調査を実施し、文学テキストと食文化の社会的文化的実践との関連に注目しながら、視覚・物質文化における宗教改革後の美術的な影響だけでなく、商業的経済的な側面を検討することにより、移民や難民との葛藤がどのように当時の英国人に体験されたかについて考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度前半において急遽病気療養を余儀なくされることとなり、同年秋から予定していた英国への長期研究渡航が中止となった。そのため、前半においては在宅で実施可能な研究資料の調査・収集を主として実施することとなった。また、後半においては、体調が回復した後に、国内出張や海外渡航も可能になったこともあり、立教大学図書館や早稲田大学演劇博物館での研究資料の調査を実施し、また年度末にかけては、オックスフォードやロンドンを中心とした実地調査も実施して、予定していた調査を開始することができた。 しかしながら、英国での調査に関しては予定していた大英図書館やボドリアン図書館、各種博物館や公文書館での資料収集に大幅な遅れが生じてしまっている。 本年度は、予定していた3つの観点(①シェイクスピア劇におけるバンケット表象 ②初期近代英国における地域社会や視覚文化 ③新教徒移民による地域社会、経済、文化への影響とその伝播 ④仲介者としてのシェイクスピア劇)から主に①と②の観点に絞って研究調査を進め、①のシェイクスピア劇におけるバンケット表象についての研究論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては英国での研究資料調査に不測の事態により大幅な遅れが生じているため、今後は研究期間の延長も視野に入れて研究計画を調整していきたいと考えている。 2024年度は、前年度末から年度をまたいで英国での3週間の調査が可能となったが、現地での研究資料調査に十分な時間をかけることができなかった。 2024年度は夏季にも同様の英国出張を予定しており、そこで計画の遅れを取り戻すように努力したいが、もし遅れを取り戻すことが難しいと最終的に判断した場合には、1年程度の研究期間の延長を視野に入れている。 また、2024年度7月にはエンブレム研究会で、②初期近代英国における地域社会や視覚文化の視点に関する研究発表を予定しており、英国近代初期における視覚文化の専門家と意見交換をしながら本プロジェクトの主題であるシェイクスピアと移民に関する考察を深めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度前半には、病気療養という不測の事態が発生したため英国への調査出張が中止となった。そのため、英国出張に伴って予定していた旅費その他の出費が国内出張と研究資料の購入費等に抑えられたため、初年度としては多くの残金を計上することとなった。 しかし、2024年度は4月と8月に二回の英国出張を予定しており、研究遂行に必要なロンドンとオックスフォードに関する現地調査を進める予定である。 また、計画の遅れが取り戻せない場合には、研究期間を1年程度延長することも予定しているので、全体としては研究の遂行と研究費の使用計画に問題は生じないと考えている。
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