研究課題/領域番号 |
23K00386
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
小西 章典 大同大学, 教養部, 教授 (50367645)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大戦間期イギリス演劇 / グラン・ギニョル / 恐怖演劇 |
研究実績の概要 |
今年度は、(1)ロンドンのグラン・ギニョル演劇ならびにメロドラマ、(2)イギリス・モダニズム、(3)20世紀初頭のイギリス文化・社会という3つの分野について、研究会の実施をとおして、文献解題を集中的に行った。また、イギリス・モダニズム関連学会に複数回出席したり、年度末に研究協力者ならびに招聘講師に講演を行っていただいたりすることで、ロンドンのグラン・ギニョル演劇の文化的コンテクストについて、包括的にとらえるようつとめた。 当初の「研究目的」ならびに「研究実施計画」のとおり、研究初年度は、ロンドンのグラン・ギニョル演劇それ自体の紹介にまず注力した。その成果として、ロンドンのグラン・ギニョル演劇の代表作ともいえるクリストファー・ホーランドの『老婆たち』(1921年初演)を翻訳し、解説とともに公にした。とりわけ、解説は、『老婆たち』に特化した記述のみをおさめるのではなく、ロンドンのグラン・ギニョル演劇の文化的意義について紹介する内容になるようにこころがけた。イギリス演劇史においてはマイナーなジャンルといえるが、ロンドンのグラン・ギニョル演劇がもつ文化的意義は、解説のなかで十分確認できるはずだ。 ロンドンのグラン・ギニョル演劇が日本語で紹介されたのは、これがはじめてであるし、『老婆たち』はフランスのグラン=ギニョルを原作とする芝居であるため、この芝居を契機に、フランスのグラン=ギニョルとロンドンのグラン・ギニョル演劇を比較考察することも容易に視野におさめらるようになったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の「研究計画」ならびに「研究実施計画」のとおり、ロンドンのグラン・ギニョル演劇を翻訳し、解説ととも公にできたが、その一方で、ロンドンのグラン・ギニョル演劇それ自体のアーカイヴ調査や書誌学的検討は実施できなかった。とりわけ、本研究課題に関する唯一の先行研究に一部不備が見られることを確認したので、ロンドンのグラン・ギニョル演劇それ自体のアーカイヴ調査実施の重要性を痛感した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関する唯一の先行研究には、ロンドンのグラン・ギニョル演劇のレパートリーが記されているが、そこには、いくつかのグラン・ギニョル演劇が言及されていないことを、初年度の研究活動をとおして認識した。たとえば、その先行研究には、Eliot Crawshay-Williamsの作品が収載されているにもかかわらず、Crawshay-WilliamsのMore Grand Guinol Plays(1927)というグラン・ギニョル演劇集に対する言及はどこにも見当たらない。劇作家Crawshay-Wiliamsという人物は政治家でもあるが、女優シビル・ソーンダイクと書簡を交わしたりなどしているため、ロンドンのグラン・ギニョル演劇にそれなりに深く関与していたといえる。Crawshay-Williamsの演劇集のように、先行研究から漏れてしまった例がいくつかあるかもしれないので、今後は、翻訳・解説による紹介活動とももに、アーカイヴ調査をできるだけ実施して、ロンドンのグラン・ギニョル演劇の全体像がとらえられるようにつとめたい。 また、今年度はモダニズム研究のなかでも、とりわけNew Modernist Studiesという研究態度に注目して、関連する論集等を読解した。本研究課題にアプローチするためのひとつの研究方法として、このNew Modernist Studiesの理論的可能性に関して、さらに考察を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末の研究会で講演者として招聘していた方(1名)の都合が悪くなってしまったため、その謝金分が未使用となった。次年度の研究会での講演者の謝金として使用することを予定している。
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