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2023 年度 実施状況報告書

女性作家の声の消失のメカニズムと再生ーフィッツジェラルド夫妻を起点として

研究課題

研究課題/領域番号 23K00391
研究機関福岡大学

研究代表者

高橋 美知子  福岡大学, 人文学部, 教授 (90389388)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードスコット・フィッツジェラルド / ゼルダ・フィッツジェラルド / モダニズム / 剽窃
研究実績の概要

研究計画に沿い、1920年代前半にスコット・フィッツジェラルドがゼルダ・フィッツジェラルドの日記や手紙をどのように作品に取り込んでいたかについての研究を行った。特に、スコットの作品に取り込まれる過程でゼルダの<声>が、如何にスコットの<声>に上書きされていったかに着目した。ゼルダは作家として広く認知されている人物ではないが、彼女がスコット以上にモダニスティックな<声>を持つ書き手であるということは、デボラ・パイクや高橋の過去の研究により指摘されている。また、自由で口語的な彼女の<声>のユニークさは、スコットや、彼の周囲の文学者にも認められていた。
スコットはゼルダのエクリチュールに認められる鮮烈なイメージや独自の言語チョイスを活かしつつも、自身のスタイルに合わせたチューニングを行うことで、ゼルダの日記や手紙からの抜粋をを違和感なく自身の作品に組み込むことに成功している。
一方で、ゼルダのプライベートなエクリチュールは、スコットの作品の一部として取り込まれ公にされる過程で、彼女らしい<声>を失ってしまう。結婚生活の初期においてゼルダはスコットの行為を公に「剽窃」と糾弾したが、それが問題となることはなく、現在に至るまでスコットの行為は批判を免れており、ゼルダ自身も当時のジェンダーシステムの中では、彼の行為を黙認せざるを得なかったことなどを明らかにした。
今年度の研究成果については、2024年3月10日に北九州大学で行われたWorkshop in Kitakyushu において、"Unveiling the Artistic Interplay of Zelda and F. Scott Fitzgerald" のタイトルで口頭発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1920年代前半においてスコットがゼルダの言葉をどのように自身の作品に取り込んでいるかの研究は進んだが、その箇所が作品全体の成立に如何に貢献しているかや、ゼルダの声の搾取を出版業界の市場化という観点から分析する点については十分に研究を進められなかった。このような点においてやや遅れはあるものの、総合的に見ておおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

2024年度はスコットのThis Side of Paradise (1920)、The Beautiful and Damned (1922)の中にゼルダのエクリチュールがどのように取り込まれているかの研究を継続しつつ、ゼルダのエクリチュールがスコットの作品の成立にどのような役割を果たしているかという観点からの分析や、出版業界の商業化が彼女の声の搾取にどのように影響したかについてリサーチを進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年購入する予定だった消耗品(資料整理用の機械類)のうち、廃盤となったものやモデルチェンジのタイミングとの兼ね合いから翌年度以降への購入に予定を変更したものがあったため。来年度以降、後継品の中から適切なモデルを選んで購入する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Unveiling the Artistic Interplay of Zelda and F. Scott Fitzgerald2024

    • 著者名/発表者名
      Michiko TAKAHASHI
    • 学会等名
      Workshop in Kitakyushu
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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