研究実績の概要 |
本年度は研究初年度として、基礎的なテクスト分析と資料調査・収集を実施すると共に、来年度に予定している研究成果の学会発表の準備を開始した。併せて研究を遂行する中で得られた知見を、論文(刊行済み)ならびに事典の項目執筆(出版決定済み)に活用した。その概要は以下の3点にまとめられる。 1)研究計画に沿ってThe Merchant of VeniceとThe Merry Wives of Windsorにおける古典古代神話と聖書への言及のクロスレファレンスの検討を進めた。成果発表を視野に入れ、特にThe Merchant of Veniceの法廷場面において小道具として舞台上で使われるナイフと天秤の象徴的意味について、古代ローマにおけるJustitia、旧約聖書のダニエル記の記述、金貸しというShylockの職業といった側面から関連諸テクストの考察を進め、セミナーペイパーの作成を開始した。 2)Cahiers Elisabethains (Volume 111 Issue 1, July 2023)の特集Hot Shakespeare, Cool Japanに招待され、Forewordとして 'Japan and Shakespeare: Acceptance and transformations in the twenty-first century'を寄稿した。この執筆に際しては本研究によって得られた知見の一部を基礎としている。 3)Circe, Jason, Laertesの三項目の執筆を担当した Katherine Heavey and Janice Valls-Russel, eds. , Shakespeare’s Classical Mythology: A Dictionary (Bloomsbury, 2024)への執筆者契約が完了し、2024年度に出版されることが決定した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目である2024年度は、上記のとおり、International Shakespeare Conferenceにおける研究成果発表が年度前半の活動の中心となる。学会後にはそこで得られた知見を基にした論文の改訂作業を中心に研究を継続する。本学会出席に併せたイギリス渡航においては、類似の関心を共有する研究者たちと、2026年に開催され、本研究の最終的な成果の一部を発表する予定であるWorld Shakespeare Congressに関する意見交換を行うことにしている。さらに、本年度に実施したBritish Libraryにおけるリサーチを継続する。 2025年度以降の研究については本年度の研究活動の結果を基に調整する可能性があるが、最終年度における研究の総括を視野に入れながら、既に国際共同研究の実績のある研究者との意見交換、打ち合わせを行いつつ、当初計画通りにThe Merchant of Venice, The Merry Wives of Windsor, Richard IIそれぞれにおける古代神話と聖書の相互関係を探求していく。
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