研究課題/領域番号 |
23K00399
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
霜鳥 慶邦 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (10400582)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 第二次世界大戦 / 記憶 / ダンケルク / コモン / 広島 / ブレグジット / COVID-19 / ダークツーリズム |
研究実績の概要 |
本年度の主な成果として、次の3つが挙げられる。 1. 英国詩人Andrew Motionが2008年に広島と東京を舞台に創作した2編の詩について論文を執筆した。論文では、戦争の記憶研究、(ダーク)ツーリズム研究、日本表象研究の成果を踏まえながらMotionの詩を読解することで、日本のナショナルな枠によって構築・継承されてきた広島の記憶とは異なる広島表象・日本表象の特徴とその意義を明らかにした。原稿は、近年中に出版予定の論集に掲載予定である。 2. Ali Smithの四季四部作について、第二次世界大戦の記憶、Brexit、COVID-19の相互関係に注目しながら分析し、さらにMichael HardtとAntonio Negriが提唱する〈共〉(コモン)の可能性を探究した。その成果を、日本英文学会関西支部第18回大会で口頭発表した(発表名「アリ・スミス四季四部作における〈共〉(コモン)の可能性」)。本発表は、Brexitの時代、コロナの時代における第二次世界大戦の記憶の今日的アクチュアリティを明らかにすると同時に、Ali Smith文学に〈共〉(コモン)の可能性を見出した点で、学術的意義に富む成果であると考えている。 3. ダンケルクの戦いをテーマとする複数の文学作品・映像作品・社会的言説の比較分析を行い、21世紀における「ダンケルク神話」の諸相について考察した。主な考察対象は、Ian McEwan, Atonementとその映画版、Lissa Evans, Their Finest Hour and a Halfとその映画版、映画Dunkirk、映画Darkest Hour、映画Churchillである。本格的考察のための基盤を固めることができたので、次年度、さらに作業を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した計画を進め、論文原稿と口頭発表のかたちでまとめることができたので、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、Ian McEwanの小説Atonementについての研究を進め、論文にまとめる。さらに、21世紀における「ダンケルク神話」の諸相についての考察をさらに進め、その成果をまとめる。夏に、ダンケルクにて現地調査を行い、研究の実証性を強化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献の購入費を当初の予定よりも低く抑えることができたため、次年度使用額がわずかに生じた。これについては、次年度に文献の購入のために使う予定である。
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