研究課題/領域番号 |
23K00415
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岸野 英美 近畿大学, 経営学部, 准教授 (90512252)
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研究分担者 |
室 淳子 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 教授 (20437453)
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (70139468)
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (90511543)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 先住民コミュニティー / 水質汚染 / 水俣病 / Keepers of the Earth / Thomas King / ドキュメンタリー / カナダ資源開発 |
研究実績の概要 |
2023年度は、主に国内外での関連資料・情報の収集と精査を行った。岸野と荒木は9月にオンタリオ、マニトバ、サスカチュワンにて現地調査を実施した。カナダの水俣病や、ウラン、ニッケル等の資源開発に関わる施設や先住民コミュニティーを訪れた。3月には荒木が所属する敬和学園大学で開催された研究会にて、カナダの水俣病と新潟水俣病について議論を行った。室はカナダの先住民コミュニティーにおける水質汚染の現状をめぐって、統計、新聞、オンラインセミナー等を通じて情報収集を行った。また、Joanne RobertsonらのThe Water Walker (2017)等の絵本、Stevie SalasらのBoil Alert (2023)等のドキュメンタリー、Thomas KingのThe Back of the Turtle (2014)等の小説に注目し、現代の先住民たちがどのように水や環境に関する問題を捉え、発信を行っているのかを考察した。佐藤はMichael J. Cadutoと Joseph Bruchac編集のKeepers of the Earth(1989)に収録されている〈水〉に関する北米先住民の物語が今日の読者に教示する事柄を分析し、現代の先住民作家が描く環境問題を扱った Dave Bouchard とRoy Henry Vickers著の絵本、The Elders are Watching(1993)もあわせて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に示した通り、岸野と荒木は現地調査を行うことができた。国内ではあるが、室と佐藤も関連する多くの資料と情報を収集し、作品考察に着手することができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度、岸野は日本とカナダの水俣病問題の解決に向けて行動したAileen Smithに注目する。作品と関連資料をまとめ、日本アメリカ文学会関西支部例会で発表する予定である。また日本カナダ文学会年次大会の特別講演に、カナダの湖水地方ノースウッズを拠点として撮影を続ける写真家の大竹英洋氏をお招きする。大竹氏には、自然に適応しながら水辺で生きる野生動物や、何千年もの間、狩猟採集の暮らしを営んできた先住民アニシナベとの交流を語っていただく予定である。他のメンバーもそれぞれが担当する作家・活動家の作品考察を進めていく。一方で現在、日本カナダ学会の出版企画(『カナダ文化事典(仮)』)にメンバー全員が参加している。先住民や環境文学、大衆文学、アトウッド作品等についてそれぞれ執筆し、完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の収束の兆しがみえ、以前にも増して国外へ容易に移動できるようになったとはいえ、航空券の価格上昇や大都市での物価上昇、さらには家庭の事情によって、佐藤と室は予定していたカナダでの現地調査を実施できなかった。2024年度以降、二人は状況をみながら現地調査を行う予定である。また、2024年度に名古屋で開催される日本カナダ文学会に著名な写真家を招聘することが決まっており、準備を進めている。
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