研究課題/領域番号 |
23K00430
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山崎 明日香 日本大学, 商学部, 准教授 (10707350)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 情動コミュニケーション / パフォーマンス理論 / 女性解放運動 / 運動美学 / セレブリティー・ポリティクス / Hollywood / デジタル・パフォーマンス / VR(バーチャル・リアリティー) |
研究実績の概要 |
2023年度は、19世紀ドイツ語圏における指導的な二人の俳優を対象に、その民主主義思想の発展と、階級や宗教や文化の差異を超えた批判的な演劇公共圏の創出を検証した。それに際して、教養商人から俳優に転じたJ.C.ブランデスについて従事した。ハンブルク国民劇場創立に尽力したこの俳優の伝記を分析し、この俳優の社会平等的で自由主義的な民主主義思想の萌芽を検証した。また、19世紀後半において、女性権利拡大に影響した俳優A.レーン=シーゲルとその政治性を検討した。その際に、この俳優の政治的なエッセイに取り組み、社会進出を遂げる女性に対する抑圧や女性の人権と教育と地位向上への主張を分析し、この俳優が、社会に蔓延していた性差別思想に抵抗したことを検証した。 また、本研究課題と関連して、俳優と民主主義のテーマについて研究を進めた。19世紀から20世紀にかけて、俳優が国民啓蒙的な側面から政治化する過程と、その現代まで続く意義と現象について検証した。その際に、多文化主義やコスモポリタニズムを体現する中間的存在の俳優が、自身の行動を通じて市民的な対話を促し政治参加の実践と民主主義アイデンティティー形成に寄与した現象を検討した。さらに、当該年度では、パフォーマーの舞台上の演技により、パフォーマーと観客との間に感情的で没入的なコミュニケーションの深化があることを関連調査の中で分析した。そして、そのことが大衆操作のツールとなっている側面についても検討した。また、当該年度では、近世から19世紀までの舞台・娯楽文化を思想的観点から調査を行い、その成果を2023年7月に国際18世紀学会(イタリア)で、また8月に国際ライプニッツ会議(ドイツ)での国際学会にて発表を行った。それらの成果の論文はオンラインで刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は、19世紀初頭のドイツ語圏作家や演劇界への影響を、文学演劇研究を基に調査する予定であったが、近世の舞台文化と同時代の思想や政治文化の背景の調査が展開した。また、予定では、イフラントの諸戯曲を調査し、この俳優の認識を検証する予定であったが、俳優A.レーン=シーゲルの調査に先に従事した。このため、当初予定していた調査を優先することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も俳優と民主主義のテーマについて引き続き二名の俳優の研究を進める。その成果については、2024年7月に国際演劇学会(フィリピン)にて発表を行う予定であり(申請審査の上受理済み)、同時に国内では日本演劇学会で発表を行う予定である(申請審査の上受理済み)。このテーマの研究成果の論文については、2023年度に国際誌に投稿済みであり、審査結果待ちの状況である。また、俳優A.レーン=シーゲルとその政治性については、国内の学会での発表を予定している。その際に、貴族社会から民衆社会に移行する過程において、旧世界からの解放を説く演劇作品へのレーン=シーゲルの関心についてさらに深く検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
円安進行により、当初予定していた価格のデスクトップPCモデルを購入することができず、より価格を押さえたノート型PCモデルを購入した。また、学内の競争的資金を獲得することができ、科研費で購入を予定していた一部の重複する研究文献の購入費を節約することができた。さらに、国外旅費についても、学内資金から一部補助を受けることができた。次年度の使用額が増加したことに伴い、研究の発展に伴って必要になる新たな一次・二次文献の購入費と、国外学会への旅費と参加費に充てる予定である。
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