研究課題/領域番号 |
23K00446
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岡本 和子 明治大学, 文学部, 専任教授 (50407649)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | ベルリン / 1920年代 / フランツ・ヘッセル / ハンス・オストヴァルト / 都市論 / 遊歩 |
研究実績の概要 |
2023年度は、主としてフランツ・ヘッセルの都市論エッセイ(『ベルリン散歩』1929)の読解、分析を行った。 1920年代末は、ヴァイマール共和制の後期で、消費文化・大衆文化が成熟してきていたものの、貧困という大きな問題は解決されないままで、街頭でもナチスと共産主義者との抗争が目にされるような時代だった。しかし、しばらくベルリンを去り、パリやミュンヒェンで過ごしていたヘッセルは、目の前にある同時代のベルリンを描写すると同時に、そこに、歴史の層も見出す。 ヘッセルは、みずからが同時代の都市を見る際の態度を「学ぶ」と呼んでいる。このとき彼の叙述は、それまでの慣習に反するような新しい現象に対して価値判断を下すのではなく、それらをニュートラルなまなざしで受け止めるものになっている。 また、ヘッセルが目の前の都市のなかに歴史的重層性を見る際の態度も、やはり「学ぶ」と呼べるものである。だがここでは、それが書物に依拠しているという意味では、「読む」とも呼べる。彼は決して、歴史を既成事実としてとらえているのではなく、そのつどの都市の風景を眼前にして、そこから浮かび上がる歴史を叙述している。 ヘッセルは、ベルリンという都市がまだまだ発見されていない、見られていない、と結論づけているが、それはつまり、ベルリンに住む住民が、いまだに自身が何者であるかを知らない、ということでもある。一見、温和な叙述に見えるヘッセルの都市論であるが、そこには、この都市の住民とはどんな存在なのか、という大きな問いが含まれている。 以上のことを、論考としてまとめ、今後発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘッセルの都市論を中心に考察を進めたが、同時並行的に、シェフラー等のベルリン論についての読解や、1920年代ベルリンの社会状況についての調査も進め、ヘッセルの都市論を多角的にとらえることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ハンス・オストヴァルトの著作の読解を進めると同時に、1920年代ベルリンの社会状況を、文学作品・歴史書等から多角的にとらえる予定である。時代潮流をとらえるさまざまな視点(アヴァンギャルド、ナチスの台頭、貧困、政治的抗争の激化等)と、その他の大都市から見たベルリンという、二つの次元で、ベルリンを多角的にとらえてゆく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
資料収集のための出張が年度末になり、そこで入手できる資料があると見込めたため、そ霊前に購入する海外文献の費用を調整したため。
|