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2023 年度 実施状況報告書

仏語圏文学の翻訳の詩学とその実践的変容ーケベック文学とN.ヒューストンを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 23K00451
研究機関阪南大学

研究代表者

真田 桂子  阪南大学, 流通学部, 教授 (60278752)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード翻訳研究 / 言語越境 / 仏語圏文学 / ケベック文学 / ナンシー・ヒューストン / ジャック・ブロー / 翻訳の詩学
研究実績の概要

本研究は、ケベックを中心とするフランス語圏文学において「翻訳の詩学」と称される翻訳理論ならびに翻訳実践を通して、それが創作活動にいかなる創造的かつ美学的効果をもたらしているかを明らかにしようとするものである。とりわけケベックの詩人ジャック・ブローは、英語の詩作品のフランス語への翻訳を精力的に行い、その過程から生み出された言語の創造的逸脱やイメージの転嫁を、自らの創作活動に積極的に反映させている。2023年度は、このブローの翻訳実践に注目し、ケベックの翻訳研究の第一人者であるシェリー・シモンによって提示された翻訳理論である「翻訳の詩学」について詳細に検証することをめざした。
2023年度の主要な研究業績としては、11月にオンラインで開催された韓国ケベック学会(ACEQ)年次大会に招聘され、La poetique de la traduction chez Jacques Brault et la litterature japonaise と題された仏語による研究発表を行った。この発表内容について、討論者のACEQ会員で仏韓語の翻訳家より極めて有益な示唆がもたらされ、ブローの翻訳実践と「翻訳の詩学」が内包する普遍性と独自性が明らかになった。
また2023年9月にはケベックに研究出張を行い、モントリオール大学を拠点に資料収集と当該研究の専門家へのインタビューを行った。とりわけシェリー・シモン氏からは、「翻訳の詩学」とその背景となったケベックの社会的状況についてのレクチャーを頂き,
極めて有益な知見を得た。さらに翻訳研究の専門家であるシェルブルック大学教授のP.ゴブー氏とも意見交換を行い、当該研究の新たな重要なコーパスとなりうる、英仏語で作品を遺した著名な歌手で詩人のレオナード・コーエンについて、興味深い示唆を得るなど大きな収穫があった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、これまで進捗させた研究成果をフランス語論考にまとめ、韓国ケベック学会(ACEQ)にて発表した。発表内容に対してACEQ会員から多くのコメントが出され、とりわけ韓国において仏韓語の翻訳実践を行っている翻訳家から、ケベックの「翻訳の詩学」について、その普遍性を示唆する興味深い見解が示され意見交換を行った。国際的な学会におけるこれらの反響や手応えにより、当該研究の方向性は正しく、新たな展望に向かって進展していることを実感した。
また海外研究出張でのリサーチによって、現地での翻訳研究についての最新の情報や研究対象となる新たな作家のコーパスや方法論についての文献の収集を行なうことが出来た。

今後の研究の推進方策

次年度(2024年度)は、引き続きジャック・ブローを中心とするケベックの「翻訳の詩学」についての検証を進める。研究対象として、J.ブローと英系詩人E.D.ブロジェットとのフランス語と英語の詩による異色の創作連歌 Transfiguration の分析にも着手する予定である。この作品の解析を通して、翻訳の美学的変容と創造性についての考察を行うが、方法論としてはこれまでの綿密なテキスト分析に加え、可能であればテキストマイニングの手法も導入し、多角的な視点からの検証をめざす。
2024年6月には、カナダのモンクトン大学で開催される国際フランコフォニー学会(CIEF)の年次大会に参加を予定しており、そこでそれまでの研究成果の一部を発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2023年度において、複数の言語にまたがる大容量のコーパスを効率的にデータ処理、分析ができるパソコンの購入を予定していたが、希望する機種が調達できず、未使用額が生じた。2024年度には購入し使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] La poetique de la traduction chez Jacques Brault et la litterature japonais, -- a la lumiere de Trois fois passera --2023

    • 著者名/発表者名
      Keiko SANADA
    • 学会等名
      L'Association coreenne des etudes quebecoises
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] ケベックを知るための56章(第2版)(項目文学編集担当、38章,41章執筆)2023

    • 著者名/発表者名
      日本ケベック学会(共編者、分担執筆)
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      978-4-7503-5661-7

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公開日: 2024-12-25  

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