研究課題/領域番号 |
23K00457
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
金山 富美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80263507)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 科学教育と文学 / 科学的概念と文学性又は精神性 |
研究実績の概要 |
当該年度は、パップ=カルパンティエ(以下カルパンティエと略記)によって編まれた数ある教科書のなかで、当時まだ初等教育さえも十分享受できなかった女性を対象に書かれた『砂粒の秘密ー自然の幾何学ー』に焦点を当て、本作品を主要テクストとして、作者が科学と文学をどのように融合させようとしたのかについて検討した。なお、本作品は、当時カルパンティエを高く評価し、彼女の死後その業績を讃えた数少ない有識者の一人、フェルディナン・ビュイッソンでさえ否定的にみなした書物であったためか、本書について分析を試みた研究論文はフランス本国でもあまり見られない。 当該年度に手がけた探求の論点としては、まず、保育学校の教師として子供向けの物語を書いてきたカルパンティエがなぜ対象を女性に絞ったこの教本に着手したのか(それは彼女が女子教育の領域に足を踏み入れる第一歩だったと言える)について、19世紀中葉の医学書をはじめとする科学的言説を紐解きながらその理由について問い、次にそこで立てた仮説を、彼女が『砂粒の秘密』という幾何学初歩の読本の扉に記したパスカルとフリードリヒ・クロイツァーからの引用を手掛かりにして本書を精読するところから具体的に証明したことである。この試みを通して、これまでカルパンティエの業績の周辺に置かれてきた『砂粒の秘密』の中に、文学的表現が初学者の何を刺激して彼らを自然科学への眼差しと興味へと誘っていったのかについての一つの解答を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『砂粒の秘密』の分析を通して、パップ=カルパンティエの試みの中に、現代の科学教育初歩で注目されているアナロジーやメタファーの重視と同一視しうる創意工夫を見出すことができた。その結果を論文として執筆し、学会誌(日本比較文化学会)に投稿、審査を経て受理され、当該年度の成果発表を行うことができた(刊行済)。また、カルパンティエの自然科学(博物誌)教育に対する試みの一端が、フランスの音楽教育にも影響を与えていると考えられることを論考にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
対象とするテクストを拡げ、あらためて詩人でもあったパップ=カルパンティエがいかにその文学的手法を通して庶民の子供や女性をはじめとする初学者に自然科学への目を拓かせ、彼女が考える「共和国市民」としての思考・表現能力を育もうとしたのかについて分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度について、当初は東京で開催される学会への参加を予定していたが、プログラムの内容を考慮した結果、広島で開催の学会の方に参加したために旅費の差額(余り)が生じ、次年度使用額がたもの。次年度は海外出張を予定しているので、円安水準のなか、翌年度分の予定額と合わせて使用していく予定である。
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