研究課題/領域番号 |
23K00473
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
高橋 真彦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (30709209)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 反局所性 / フェイズの転送 / 例外的格標示 / 長距離名詞句移動 |
研究実績の概要 |
今年度は、節境界を超えて適用される名詞句移動が補文標識の種類によって制限されるという観察を取り上げ、フェイズの転送理論 (Saito 2017) と反局所性 (Abels 2003) の観点から説明を試みた。まず、主節動詞が選択する補文標識句 (CP) の主要部が「か」である(ようにみえる)場合、(1)補文主語の目的語位置への移動(RtO)/補文主語への例外的格標示(ECM) が不可能であるが、(2)補文主語から主節主語位置への移動(raising-to-subject (RtS)) は可能である、という非対称性の存在を確認した。その上で、この非対称性がフェイズの転送理論と反局所性の相互作用から導出できるか検討した。提案された分析は以下のとおりである:(1)主節動詞が選択する補文標識句 (CP) の主要部が「か」のように見える場合でも、「か」は必ず格助詞の投射(KP)に直接支配されている、(2)格助詞は独立してKPを投射しフェイズを形成する。この分析によれば、「か」が主要部となるCPフェイズはKPフェイズに直接支配される。フェイズの転送理論によれば、KPフェイズが完成した段階でCPフェイズが転送されるため、CPフェイズ内の補文主語はKPフェイズの端に移動することになる。このとき、ラベル付けの観点から、補文主語はKPフェイズの端に留まることはできない。しかし、KPフェイズの端から動詞句(VP)内への移動は反局所性条件によって阻止される。これにより、主節動詞が選択する補文標識句 (CP) の主要部が「か」である(ようにみえる)場合RtO/ECMが不可能であるという観察が捉えられる。一方、KPフェイズの端から時制句(TP)領域への補文主語の移動は反局所性条件に阻止されない。これにより、補文主語の長距離名詞句移動が可能であるという観察が捉えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な観察及び理論的な分析の見通しが立ち、研究発表の見通しが立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果を学会や研究会で報告し、評価を受ける。論文を投稿し査読を受ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定された学会参加を取りやめたため、次年度使用額が生じた。学会の参加や論文の英文構成などを行う予定である。
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