研究課題/領域番号 |
23K00506
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
那須 紀夫 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00347519)
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研究分担者 |
嶋村 貢志 金沢星稜大学, 人文学部, 准教授 (00755689)
秋本 隆之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (70824845)
依田 悠介 東洋学園大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (00745672)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 節の名詞化 / 節サイズ / 格交替 |
研究実績の概要 |
本研究では次の3つのサブテーマを掲げている:(A) CPやTPの名詞化に見られるバリエーションの探求、(B) 述部の名詞化に見られるバリエーションの探求、(C) 名詞節における格配列と節構造の相関性の探求。2023年度はこのうちの(B)と(C)に重点を置いて研究を進め、その成果を国際学会で発表した。(A)については、前年度までに行った予備的研究を発展させて論文にまとめ、専門誌に投稿した。以下、(B)と(C)に関する具体的な取り組みについて概述する。 (B)は、欲求・願望を表す形容詞「欲し(い)」が接辞「-さ」によって名詞化されたときに「欲し(い)」の項が属格だけでなく主格や対格によっても格標示される事象(例:太郎は金{の/が/を}欲しさに嘘をついた)を考察対象として、格交替が起こるメカニズムの解明を試みた研究である。考察の結果、この事象に見られる格交替は名詞化された句のサイズに連動していることが判明した。それを基に、名詞句全体がDPとなる場合には属格が現れ、DPを欠いたnP構造となる場合には主格ないしは対格が現れるという分析を提案するに至った。 (C)は、従来名詞修飾節で起こるとされてきた主格・属格交替が、それよりもサイズの小さな動詞句(vP)内部でも起こることを指摘し、格交替のメカニズムの解明を目指した研究である。名詞修飾節における主格・属格交替を補文標識への[+N]素性付与と関連付けて説明しようとするHiraiwa (2005)の分析を拡張し、同様の分析がサイズの大きな節のみならず、動詞句(vP)内における主格・属格交替でも可能なことを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、述部の名詞化プロセスの探求および名詞節における格配列と節構造の相関性の探求を行うことが主たる目標であった。そのいずれについても、考察対象である現象に関する分析を考案し、その妥当性を裏付けるデータと理論的説明を得ることができた。加えて、その成果を国際学会で発表して相応のフィードバックが得られた。以上の理由から、研究が当初の計画通り進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、23年度に行った研究発表の内容を論文にまとめる作業を進めるとともに、上記サブテーマ(A)(B)(C)それぞれについてこれまでの分析を深化・発展させることを目標とする。(A)については、日本語と英語の疑問節の名詞化プロセスに見られる違いについて原理的な説明を与えるモデルの構築を目指す。(B)については、接辞付加による名詞化のパターンとして、新たに否定辞「ない」に名詞化接辞「-さ」が付加される事例を分析する。(C)については、名詞構文における主格・属格交替と密接な関係を持つ連体形述語の形成について検討を進める。上記の取り組みと並行して、これまでの研究成果と今後の展望について広くフィードバックを求める機会を設けるために、節の名詞化をテーマとしたワークショップを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見込んでいた国際学会への出席および予定していた備品の購入を行わなかったため、その分だけ残金が発生した。2024年度には国内学会・国際学会への出席および備品の購入を予定しており、前年度の残額分をこの出張に充当する予定である。
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