研究課題/領域番号 |
23K00518
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 正人 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90337410)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | Brahui language / asyndetic parataxis / Dravidian linguistics / historical syntax / conditional clause |
研究実績の概要 |
今年度はブラーフイー語研究の基盤となる、グロス付きテキストの作成を行った。ブラーフイー語話者であるパキスタンのバローチスターン大学准教授のリアーカット・アリー博士の協力を得て、民話の録音の書き起こしと小説のローマ字化を進め、その結果700ページ弱のグロス付き書き起こし対訳テキストを作成することができた。現在はそのテキストに語彙集と文法概要をつけて、Brahui Texts という題で出版の準備を進めている。 また、テキストを用いた文法の研究として、Asyndetic conditionals in Brahui という論文をリアーカット・アリー博士と国際共同研究で執筆した。これは、ブラーフイー語において条件文を作る際に、「もしも~たら」といった語を一切使わず条件を表すことができることに注目し、その構文の成立条件を考察したものである。この構文においては、現在の文脈ながら過去形を用いることで、その事象が仮定であることを表すバックシフトという方策が用いられている。バックシフトはフランス語など世界の言語に見られる仮定の表現法であり、それがブラーフイー語で一般的な接続詞「そして、それから」の省略と組み合わさって if なし条件節が成立していると主張した。この論文は査読を経て Oxford University Press の Handbook of Dravidian Linguistics に掲載予定である。 研究成果はイタリアで開催された 37th South Asian Languages Analysis と Dravidian Linguistic Association の招待講演で発表した。 また、同じく条件節の成立に関する研究を日本語の論文としてまとめ、論文「ブラーフイー語の時制とifなし条件文」を執筆し、三省堂書店から出版予定の『時間と言語」に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に論文2本のほか、テキストの出版の準備にまでこぎつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者であるリアーカット・アリー博士がパキスタンに帰国したが、引き続き連絡をとりつつ、データの拡充を進め、文法執筆を進める予定である。 パキスタンのバローチスターン州は情勢が悪いため、調査に赴くことは難しいが、アリー博士にデータを送ってもらうことで進展を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への出張において、予想以上の円安のため予定以上の費用がかかり、そのため予定していた調査に必要な旅費が確保できなかった。今年度の調査に振り向ける予定である。
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