研究課題/領域番号 |
23K00555
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中本 謙 琉球大学, 教育学部, 教授 (10381196)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 琉球語 / 危機言語 / 記述的研究 |
研究実績の概要 |
琉球語は危機言語に指定されて以降、以前にも増して研究がなされ、特に南琉球の離島を対象とする研究が増えている。その一方で沖縄本島の交通が不便で目立たない集落等では、琉球の中でも特徴的で比較、対照研究に重要な現象がみられるにもかかわらず、ほとんど調査されていない地域が存在する。このような地域は僻地であることが多く、話者の数も少ないといった問題があるため、緊急に調査が必要である。 このことを踏まえ、本年度はうるま市宮城島方言を中心に音韻、動詞・形容詞、助詞の臨地調査を実施した。その他に本部町瀬底島方言についても臨地調査を実施した。得られた資料は体系化し、その特徴を中心に今後刊行が予定されている沖縄県の県史に投稿した。 本年度は八重瀬町の志多伯、外間、長毛についても基礎語彙を中心としたプレ調査を実施し八重瀬町史の言語編の刊行に向けて資料を八重瀬町に提出した。また恩納村史の言語編(近年中に刊行予定)の執筆にも携わっており、人間関係語彙を中心とした恩納村方言の調査も実施した。 これまでの調査資料をベースに2024年2月にはおきなわ教員研修高度化フォーラム「しまくとぅば継承と学校教育-地域の言語文化を教材とする実践事例を中心に-」を代表者として開催し、「沖縄県の言語事情と学校におけるしまくとぅば指導の視点」というタイトルで講演した。本フォーラムでは琉球文化の基層であるしまくとぅばを学校教育の場でどのように取り扱い、子どもたちに親しみを持たせられるのかについて考え、学校種を超えて多くの現役教員(主に国語)と共有することができた。 その他に琉球語学者の故中本正智が1960年代~1970年代に調査した琉球語の録音資料の整理を進めている。本研究で得られた資料と比較、対照研究することで更なる研究成果が期待できそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも触れたように琉球語のうち、特徴的な現象があるにも関わらず、様々な事情によりほぼ調査がなされておらず言語資料の蓄積が少ない地域を選択し、生抜きの高齢話者(生まれも育ちも当該地域で現在90代以上)に調査して、音韻、動詞・形容詞の活用を体系的に明らかにすることを予定している。また助詞においても可能な限り語形、その用法を調査する。語彙については、待遇表現を意識した代名詞、人間関係語彙を中心とした調査を予定しているが、これは文法調査票に盛り込んで行う。以上、新たな琉球語の基礎資料の保存を本研究の目的としている。 令和5(2023)年度はうるま市宮城島方言を中心に以下の調査、研究を予定していた。 ①音韻体系の調査、②動詞・形容詞の活用体系の調査、③助詞の語形とその用法の調査、④語彙の調査(人間関係語彙、代名詞中心)。 おおむね順調に進展させることができたが、待遇表現等さらに詳細に調査を進める必要があるため、次年度も引く続き当該地域の補充調査を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、八重山語(方言)の中から緊急性の高い地域を予定しているが、2023年度にうるま市宮城島方言を調査した際に、いろいろと特徴的な現象が確認されたので、近隣地域を調査する必要が生じている。そのため、2024年度はうるま市伊計島方言の調査も実施することとする。内容的には①音韻体系の調査、②動詞・形容詞の活用体系の調査、③助詞の語形とその用法の調査を中心に据える。 得られた資料は研究成果として保存し、学術的に活かしていくことはもちろんであるが、琉球語の継承に寄与することも視野に入れて進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究計画の関連地域の調査も予定していたが、話者の体調的な都合等により2023年度内に実施することができなかったため、2024年度の予定に加えて臨地調査を計画している。
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