研究課題/領域番号 |
23K00622
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研究機関 | 東大阪大学短期大学部 |
研究代表者 |
石鍋 浩 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 教授 (90424051)
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研究分担者 |
梓川 一 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (10353046)
野口 代 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80744854)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 高齢者に対する顕在的態度 / 高齢者に対する潜在的態度 |
研究実績の概要 |
高齢者虐待は介護現場が潜在的に抱える問題であるが,外国人の高齢者虐待に対する認識は不明な点が多い。外国人介護スタッフと日本人介護スタッフの協働の始まりに伴い,介護現場における異文化理解の重要性も高まりつつある。介護現場における異文化摩擦の要因となる恐れも内包しているため,外国人による高齢者虐待に対する認識の解明は社会的要請の高い課題である。本研究では,外国人による高齢者虐待に対する認識を明らかにすることを目的とした。 2023年度は,専門教育が高齢者虐待認識に与える影響を検討した。介護専攻留学生30名 (ベトナム人) と介護専攻日本人学生30名を対象とし,祖父母との同居経験の有無,家族内での介護経験の有無,現在の居住形態 (一人暮らしか誰かと同居か) について質問紙を用いて調査した。また,高齢者に対する顕在的態度と潜在的態度の調査を実施した。加えて,高齢者虐待に関する認識の調査を実施した。 高齢者虐待に対する認識について,虐待の前提条件ありなしの得点と出身の違いによる差を検討するため,2要因反復測定分散分析を行った。結果,ベトナム人の高齢者虐待に対する認識が日本人より優位に高かった。また,複数の項目において,虐待の前提条件の有無出身との間に交互作用が認められた。介護現場において,一部外国人受け入れへの懸念も示されているが,興味深いことに,高齢者虐待の面に関しては,留学生の方が高い認識を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,「介護専門教育を受けた者の高齢者虐待に対する認識は,文化背景の影響を受けるか」という問いの解明に取り組んだ。介護を専攻する留学生と日本人学生のデータを取得し,グループ間の比較を行った。介護を専攻する留学生を対象に,高齢者虐待に対する認識を計量的に調査した例は少ない。これまで調査が及んでいなかった対象からデータを取得できた点は評価できる。データの解析も順調に進み,論文として投稿する準備が終了している。 一方,介護を専攻しない留学生のデータ取得には至らなかった。「同一の文化背景を持つ場合,介護専門教育が高齢者虐待に対する認識に影響を与えるか」という問いに対し,早い時期にデータを取得する必要がある。本研究の対象となる,介護を専攻しない留学生を早期の募集し,当初の計画を遂行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,介護を専攻しない留学生介護を専攻しない日本人学生を対象に,文化背景が高齢者虐待に対する認識に与える影響についてさらに検討を加える。2023年度当初は,介護を専攻しない留学生のデータを取得する見込みであったが,必要なサンプルがそろわなかったため,2024年度の計測課題となったが,介護を専攻しない留学生と日本人学生のデータを取得することにより,当初の計画通りに軌道修正することが可能である。 2024年度の研究の問いは,「文化背景により高齢者虐待に対する認識に違いはあるか」である。文化背景が虐待に対する認識に与える影響を確かめるため,介護に関する専門知識を持たない留学生と日本人学生のグループ間の比較を行う。また,2023年度に取得した,介護を専攻する留学生と日本人学生との比較検討も推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,2023年度に予定していた,介護を専攻しない留学生に対する調査を実施することができなかったためである。2024年度は,介護を専攻しない留学生に対する調査を実施する。次年度使用額は,その謝金として使用する。 2024年度助成金は,2024年度にデータ取得を予定している介護を専攻しない日本人学生に対する調査を実施する際の謝金,介護福祉学会学会誌投稿料,介護福祉学会,教育工学会,介護福祉教育学会における発表にかかる費用として支出する予定である。
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