研究課題/領域番号 |
23K00725
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研究機関 | 中央学院大学 |
研究代表者 |
阿久津 仁史 中央学院大学, 商学部, 講師 (00973695)
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研究分担者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 教授 (80442169)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 英語ライティング / 匿名掲示板 / フィードバック / 英語母語話者の評価 |
研究実績の概要 |
1年目は3つの研究を行った。研究1では、日本人大学生131名を対象に、SakaiのCMSを活用した電子掲示板を活用した英語ライティングと匿名のコメントフィードバックを半期で6回行い、事前事後のライティング力の変化を、4人の英語母語話者に「内容」・「論理/構成」・「語彙」・「文法」・「機械的技術」の5つの観点(各観点で5点満点)で評価して貰い、英語学力上位群と下位群に分けての分析を行った。研究2では、事後に英語のライティング力への影響に関しての質問紙調査を行い、影響を与えた要因を探った。研究3では、多重知能理論に基づく質問紙調査によって、コメントフィードバックが英語のライティング力に影響を与えやすい、もしくは与えにくい学生の内的要因を探った。 結果として、研究1では、上位群も下位群も同じように英語ライティング力の伸びを示した。研究2では、コメントフィードバックを貰うことにより、読者を意識して、話の流れを考えて、伝えたい内容を重視して書くようになった、という意識の変化が見られた。その要因として、コメントフィードバックを貰える、匿名なので間違いを気にせずに済む、という二つの項目が高かった。研究3では、多重知能理論の8つの知能の上位群と下位群に分けて英語ライティング力の伸びの差を分析したところ、「論理数学的知能」の上位群と下位群のみが有意差が見られ、他の知能に関しては有意差は見られなかった。 本年度は、電子掲示板を活用した匿名のコメントフィードバックが英語ライティング力に効果があることが明らかになり、その要因もある程度分かってきた。しかし、多重知能理論の中の「対人的知能」が高い群の方が、匿名のコメントフィードバックにより英語のライティング力が伸びるであろう、という仮説は検証できなかった。その要因を明らかにして新たな質問紙の活用や別の仮説の検証などが2年目以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目で、英語学力の上位群や下位群を問わず、電子掲示板を活用した匿名のコメントフィードバックが英語ライティング力に効果があることが明らかになり、その要因もある程度は明らかになった。しかし、ある学会で、「どのような学生に対して効果があるのかを明らかにする方が、今後の英語教育に対する示唆となる」という意見を頂いた。そのため、当初の研究計画には無かったが、どのような特性がある学習者に対して効果があるのか、もしくは無いのかを明らかにするために、多重知能理論に基づく質問紙調査を行い分析した(研究3)が、仮説とは異なる結果となった。その要因は、質問紙の問題なのか、もしくは、仮説自体の問題なのかの検証が行えなかったため、2年目以降に持ち越しになったが、それ以外は、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
以下の内容を進めていく、(1)匿名の電子掲示板を用いたコメントフィードバックの英語ライティング力に対する効果は、1年目に対象となった学生に対してのみであるのか、もしくは、ある程度普遍的な効果を予測できるのかを明らかにする、(2)その効果を英語ライティング力の伸びに加えて、英語学習意識や意欲を測る新たな質問紙を活用して検証する、(3)多重知能理論に基づく新たな質問紙を用いて、どのような特性がある学生に対して効果高いのか、もしくは低いのかを検証する。以上の3つの研究に対するデータ収集に関して本研究協力者と計画、実践をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目は、学会が東京周辺で行われたり、オンラインで行われたりしたため、旅費が当初の計画を大きく下回った。その分は、2年目に、在外研究でオーストラリア滞在中の研究協力者との打ち合わせや学会参加等により使用予定である。
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