研究課題/領域番号 |
23K00786
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
中西 弘 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (10582918)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | プロソディシャドーイング / 統語処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シャドーイングトレーニングにより、日本人英語学習者にとって認知的負荷の高い目的格関係節を含む文の処理が促進されるかどうか調査することにある。また、目的格関係節のような認知的負荷の高い文と、単純他動詞文のような統語的に単純な文とを比較することで、シャドーイングが特に認知的負荷の高い文の処理に有効であるかどうかを検討した。 46名の日本人英語学習者を対象に、リスニングトレーニング群とシャドーイングトレーニング群に分けて実験を行った。その結果、両群ともに目的格関係節の処理において、正確性の向上、読み時間と理解時間の短縮が見られた。これは、繰り返し文に接することで統語的プライミングが生じ、特定の文構造の処理が促進されたこと、また、韻律的・統語的情報が一致する文に繰り返し接することで、学習者が文の構築に韻律的手がかりを利用できるようになったことが理由として考えられる。 一方、認知負荷の低い文においては、トレーニングの顕著な効果は見られなかった。これは、第一言語の韻律と統語処理に関する先行研究で、統語的に複雑な文の理解において韻律的手がかりがより効果的に利用されることが示唆されていることと一致する。 本研究の結果から、シャドーイングでもリスニングでも、韻律的・統語的境界が一致する文を繰り返し処理することで、学習者の統語処理が向上する可能性が示された。また、これらのトレーニングは、統語的に複雑な文を扱う際により効果的である可能性が示唆された。 今後の研究では、シャドーイングとリスニングトレーニング後の、学習者の英語発話の韻律的特徴を比較し、シャドーイングが統語的に複雑な文を産出する際に、統語的境界を明確にする韻律情報を学習者が付与出来るどうかを調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、シャドーイングにまつわる以下の業績を残すことが出来、おおむね順調に進展していると言える。書籍:川﨑眞理子、中西弘、西村浩子、三木浩平編著(2024)『第二言語習得研究が解き明かす外国語の学習』くろしお出版.論文:Nakanishi, H. (2023). Examining the Role of Prosody Shadowing in Sentence Comprehension for Japanese EFL Learners, JASEC 32, 49-59.口頭発表:中西弘(2023). 「顔動画vsモザイクシャドーイング:行動データ分析」.門田修平 (代表)、顔動画シャドーイング.ことばの科学オープンフォーラム2023、2023年10月8日、 関西学院大学梅田キャンパス.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、日本人英語学習者を対象に、プロソディシャドーイングトレーニングを行うことで、(1)複雑な統語構造を含む英文を産出する際に、英語らしいプロソディを実現できるようになるのか、(2)複雑な統語構造を含む英文を理解する際に、統語構築の手掛かりとなる韻律情報を即時的に利用することが出来るようになるのか調査する予定である。 具体的な研究としては、(1)日本人英語学習者50名を対象に、ターゲット文(目的格関係詞を含む文のような統語的に複雑な文で、適切な韻律情報を付与した音声を提示)を、繰り返しシャドーイングさせることで(対象群として、リスニングトレーニンググループを用意する)、ターゲット文を音読する際、適切な英語プロソディを実現することが出来るようになるのかどうか調査する。特に、リズム・イントネーション・統語境界を示す韻律情報に着目する。実験により得られた音読データは、音響分析ソフトPraatを用いて、リズム・イントネーション・ポーズ位置を音響分析する予定である。 また、日本人英語学習者の多くは、音声の韻律情報(例:ピッチ・ポーズ)を利用して英文を正確かつ迅速に処理できないことが指摘されている。そこで、(2)視覚世界パラダイムと呼ばれる視線計測装置を用いて、日本人英語学習者が、統語的に複雑な文を理解する際に、韻律情報をどのように利用しているのか調査する。そのうえで、プロソディシャドーイングを重ねることで、統語構築に韻律情報を効率的に利用することが出来るようになるのかどうか調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験機器(眼球運動測定装置)を購入予定であるが、前年度の予算では足りないため、本年度に回しました。
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