研究課題/領域番号 |
23K00789
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三田 辰彦 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (00645814)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 上寿 / 礼制 / 漢-唐 / 東アジア / 比較史 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、中国古代の諸儀礼における上寿礼が、いかにして一つの型を形成し、当時の人々の心性といかなる関連性をもつのかを解明することである。この課題遂行を通して、東アジア礼制比較史研究の総合化の促進を試みる。 初年度に当たる2023年度は、前半期に研究発表(招待有り)の機会があったものの、座談会やコメントという性質上、直接的な成果報告ではなく今後の研究交流の基礎を固めるものとして発表の場を活用した。とりわけ、4年ぶりに全面的な対面式で開催された第14回中国中古史青年学者聯誼会(上海・復旦大学)においては、座談会の報告者の一人として登壇し、COVID-19流行下の2020年~2022年の3年を日本の歴史研究者がどう回顧したかについて中国・台湾の研究者に提示した。あわせて、当該期における報告者の研究(前科研20K13156)を紹介し、本研究課題のねらいでもある学際的国際的研究を進めるヒントとして例示した。この報告を通して、研究遂行におけるオンライン・非オンラインそれぞれの有効性について相互理解を深めた。また、彼我の歴史研究が抱える「専門化」と「総合化」の調和をテーマとした総合討論への参加を通して、異なる学術的文脈からなされる研究の相互理解を促すための視座を獲得した。 一方、本研究課題の柱となる、上寿および上寿礼に関する史料の収集は、正史(『史記』~『新五代史』)、唐代の制度史料(『通典』)、唐宋の類書(『藝文類聚』『太平御覧』)など史料群の一部にとどまった。分析についても部分的であり、上寿礼の音楽に付随する歌の有無に関する議論(『通典』所収)、上寿の起源に関する議論(北宋の類書『事物紀原』所収)の考察のほか、収集史料に対する初歩的な分析に着手するのみであった。この点は次年度に巻き返しを図りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の時点で、海外の国際研究集会での交流を通して国際的学際的研究を推進する視座を得たことは一定の収穫があったと言える。また、本研究課題と関連するプロジェクト(22H00686)でも研究分担者として参加し、東アジア各地域史研究者との交流を継続できた。とりわけ、2023年7月に担当した金の儀礼書『大金集礼』の訳注、2024年3月に参加した那覇巡検での琉球王国史料の閲覧を通して、本研究課題で主に扱う時代の礼制史料がいかなる形で異文化の王権に利用されたか、その具体的様相を知ることができたことも、今後の研究遂行にとって一定の収穫となった。 とはいえ、本研究課題の柱となる史料の網羅的収集・整理・分析が遅れている点を勘案し、最終的に「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは遅れている史料の網羅的収集・整理・分析を進めたい。その際、北宋の類書『太平御覧』の「上寿」という項目にまとめられた史料をヒントに、上寿に関連するキーワードを類型化し、収集の幅を広げていきたい。また、初年度の初歩的な分析を通して、研究計画時には気づかなかった論点(上寿礼と音楽との関連についてなど)も見つかった。この点も新たに掘り下げて分析を進めつつ、第2年度の後半期には研究成果の公表を実現させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年11月中旬に唐代史研究会秋期シンポジウム(法政大学)にて、前科研(20K13156)からの関心を発展させた研究報告を行う予定があった。だが折悪しく身内の不幸に遭い、急きょ報告を取りやめざるを得なかったため、旅費の余剰が生じた。また、史料の網羅的収集・整理が後回しになったこともあり、書籍購入を見送ったため、物品費の余剰が生じた。 次年度は2023年度と同様に海外での研究集会への参加予定があること、国内でも対面式を再開した学会が増えたことから、出張に係る経費が多く見込まれる。そこで、余剰分は翌年度分として請求した助成金と合わせて、旅費および今年度の購入を見送った図書費に当てるつもりである。
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