研究課題/領域番号 |
23K00800
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高綱 博文 日本大学, 通信教育部, 研究員 (90154799)
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研究分担者 |
関 智英 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (30771836)
山口 早苗 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 講師 (30913066)
南 祐三 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (50633450)
門間 卓也 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90868291)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 対日協力者 / 対独協力者 / 責任追及 / 亡命活動 / 記憶政治 / 国際比較 / 歴史修正主義 / 歴史認識 |
研究実績の概要 |
本研究は「対日・対独協力者の責任追及とその亡命活動を通じた記憶政治の国際比較研究」は、戦後各地で実施された「協力者」に対する諸裁判、その後の彼らの亡命活動を巡る地域社会からの応答を起点に大戦時の「加害/犠牲」を巡る記憶に社会的意味付けが施されたと捉えて、そのアジアおよびヨーロッパの事例を比較検討しながら論じるものである。 本研究は戦後の地域社会でどのように「協力者」の責任が追及され、いかなる歴史認識が編まれたかグローバルな規模で探究するものである。具体的な分析対象として、市民間で戦争経験/記憶が惹起される契機となった「対日・対独協力者」を巡る諸裁判、ならびに、彼らのトランスナショナルな亡命活動の二点を取り上げる。 本研究は人々の多様な戦争経験と記憶政治の連関を探究する上で、「対日・対独協力者」を巡る政治実践や、それを通じた社会的作用に注目するものである。その焦点は、中国史・西洋史分野の研究対象地域毎に ①戦後の諸裁判の実態と影響 ②亡命活動と国際政治 の二点に分節される。各課題に中国史(担当:髙綱、関、山口)と西洋史(担当:南、門間)の研究者が取り組み、その進捗状況を比較する会合を定期的に設けることで共同研究を実施している。 2023年度は個別研究を各自が進めながら国際比較を行う研究会をオンラインで開催した。本年度は欧州や中国における現地調査は政情の不安定などの理由により、主に先行研究の調査を行った。なお、対日協力者に関する史料調査の中で一般社団法人中日文化研究所において本研究を実施する上で重要な未公開の日中関係史料を多数発見し、その整理と検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は人々の多様な戦争経験と記憶政治の連関を探究する上で、「対日・対独協力者」を巡る政治実践や、それを通じた社会的作用に注目するものである。その焦点は、中国史・西洋史分野の研究対象地域毎に ①戦後の諸裁判の実態と影響 ②亡命活動と国際政治 の二点に分節され、各課題に中国史(担当:髙綱、関、山口)と西洋史(担当:南、門間)の研究者が取り組み、2023年度は先行研究の整理を中心に各自が研究・調査を行い、その現状をオンライン会議で報告しながら実施してきた。 なお、研究代表者の髙綱は「対日協力者」の史料調査の過程で中日文化研究所に日本の敗戦から1950年代における日中知識人の交流関係を中心とした膨大な未公開史料があることを発見し、その整理と検証作業に取り組んでいる。研究分担者の関智英氏は『江蘇日報』社論目録や『華文大阪毎日』目録を作成し、山口早苗氏は日本占領下の「対日協力者」の文学活動を調査しながら、彼らの戦後における史料調査を進めている。門間卓也氏は東欧から「グローバル・ファシズム」を再考するため研究を進めている。南祐三氏は「フランスにおける対独協力者に対するエピュラシオン(粛清)1944~1953年」について学会報告を行った。 近年、欧州の政情不安や円安などによる経済的理由、また中国における档案館(文書館)所蔵史料の閲覧が著しく困難になるなど現地における調査研究の進展に影響している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は戦時・戦後期における人々の多様な戦争経験と記憶政治の連関を探究する上で、「対日協力者」と「対独協力者」を巡る政治実践や、それを通じた社会的作用に注目するものである。その焦点は、中国史・西洋史分野の研究対象地域毎に ①戦後の諸裁判の実態と影響 ②亡命活動と国際政治 の二点に分節される。前年度に引き続き、各課題に中国史(担当:髙綱、関、山口)と西洋史(担当:南、門間)の研究者が取り組み、その進捗状況を比較する会合を定期的に設けることで共同研究を実施する。 なお、「対日協力者」に関する史料調査の中で中日文化研究所において日本の敗戦後から1950年代における戦後日中関係史に関する多数の未公開史料を発見し、現在調査・検証作業を行っている。同史料により戦後「対日協力者」問題は、日本人の戦争協力者や戦争責任の問題と関係させて歴史的に考察することが必要となり、本研究の関連テーマとして実施する。なお、欧州や中国における史料調査が困難になりつつある現状を鑑み、現地調査の在り方を再検討する。 上記の個別研究を各自が進めながら国際比較を行う研究会を対面またはオンラインで定期的に開催する。本年度には先行研究の調査を行いながら可能であれば現地文書館での調査を実施し、中間報告のワークショップも行う。3年目に共同研究のまとめを行い、国内でシンポジウムを開催し、海外の国際学会で研究成果を報告し、論集刊行を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
欧州における政情不安や円高などの経済的理由、また中国における史料調査が現地の档案館(文書館)における史料閲覧が制約を受けて困難とであることが判明し、予定していた出張を取りやめた。令和6年年度は、海外における史料調査のあり方を見直し、また国内での中日文化研究所で発見した新史料の調査やデジタル化を計画しており、未使用額はその経費とする計画である。
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