研究課題/領域番号 |
23K00832
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (00359449)
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研究分担者 |
宇都宮 啓吾 大阪大谷大学, 文学部, 教授 (40257902)
垣中 健志 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (70902138)
藤間 温子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 客員研究員 (00810368)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 木簡 / 墨書土器 / 刻書土器 / 山垣遺跡 / 市辺遺跡 / 宮町遺跡 / 日本古代史 |
研究実績の概要 |
本研究は、丹波・丹後地域を対象とし、古代出土文字資料の悉皆再調査を基礎として現在の調査研究レベルをふまえた最良の資料群を提示するとともに、その歴史的・地域的特質を、山陰道諸国との比較の視角から明らかにしようとするものである。 研究の内容は、①木簡・墨書土器等の悉皆調査による、全点の高精細赤外撮影と、複数の赤外線装置による再釈読、②出土点数の多い遺跡の資料を中心とした検討による、遺跡の性格や特徴の検討、③樹種をはじめとした木簡の自然科学的分析、④木簡や墨書土器の書風に関わる時代的・地域的特質の検討、を計画しており、古代丹波・丹後の古典籍・古写経や、山陰道諸国の出土文字資料との比較検討を通して、総合的な検討をおこなう。加えて、文字の様々な特徴に注目しつつ、遺跡の性格解明に寄与する事象を抽出できないか、吟味することをめざしている。最終年度には、研究成果報告書としての『古代丹波国丹後国関係出土文字資料集成』の刊行を予定している。 初年度の令和5年度には、研究のもっとも基礎となる資料の探訪調査、撮影を進めた。年度当初から、奈良文化財研究所の保管する都城木簡の撮影・調査を進めたほか、水漬け状態で保管している木簡の樹種の判別作業をおこなった。下半期からは、他機関が所蔵される資料の調査を開始し、紫香楽宮(宮町遺跡)のほか、兵庫県丹波地方の資料を調査し、点数でみて全体の約4割の資料について調査、撮影を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあたる令和5年度には、都城出土木簡の熟覧調査、撮影を進めた。対象とした遺跡は、飛鳥地域(飛鳥池遺跡、石神遺跡)、藤原宮・京跡、平城宮・京跡(うち、水漬け状態で保管している資料)、宮町遺跡(紫香楽宮跡)である。 加えて、墨書土器の半数以上を占める丹波地方(兵庫県内)の調査を開始した。12月に兵庫県立考古博物館を訪問し、同館に保管される資料のうち、山垣遺跡、市辺遺跡出土の木簡および墨書土器の熟覧調査、撮影をおこなった。 このほか、、京都府埋蔵文化財調査研究センター保管資料の所在確認を依頼し、調査の準備を進めた。令和5年度中に調査を実施した資料は、木簡136点(予定している木簡は211点)、墨書土器285点(予定している墨書土器は約900点)の調査を終えており、初年度の調査成果としては、当初計画通り概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、平城宮・京跡出土木簡のうち保存処理済のものの調査を開始するほか、丹後地方の出土資料の調査および撮影に着手する予定である。 年度当初の4月に、京都府立丹後郷土資料館および京丹後市立丹後古代の里資料館保管資料の調査、5月に兵庫県立考古博物館保管の丹波国出土墨書土器(約270点)の調査を予定しており、日程等の調整を終えている。 加えて、下半期には、京都府埋蔵文化財調査研究センター保管資料(約180点)の調査をおこなう予定で調整を進めており、令和6年度中に、府県の保管する資料のほぼ全点について調査、撮影を終える見込みである。 なお、都城出土木簡のうち、向日市教育委員会が保管する長岡宮・京跡出土木簡3点は、当初令和5年度の調査を予定していたが、市文化財課庁舎移転の繁忙を避け、調査を遠慮したため、令和6年度に調査を延期した。令和7年度以降、府県内市町村保管の資料の調査、撮影を進めるとともに、報告書編集にむけて、釈文の再検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度研究開始当初に調査携行用ノートパソコンを新規に購入する予定であったが、調査で使用する赤外機器のWindows11での動作環境が不明のため、購入を延期して対応を協議していた。現状、旧使用PCの動作が不安定で更新の必要があり、赤外線機器ソフトの動作環境についても一定の目処が得られたため、令和6年度の早い段階に新規PCを導入する予定で、現在発注業務に入っている。
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