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2023 年度 実施状況報告書

中世東寺長者とその拠点院家群に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K00840
研究機関山口大学

研究代表者

真木 隆行  山口大学, 人文学部, 教授 (00325234)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード東寺長者 / 真言宗 / 院家 / 東寺 / 仁和寺
研究実績の概要

本研究は、「中世の東寺長者たちの就任に至る昇進過程とその政治的背景を明らかにするとともに、彼らの拠点寺院や拠点院家の分布や動向を把握することを通じて、中世の真言宗勢力の中枢秩序とその変質過程を明らかにすること」を目的とする。この第1段階として、「東寺長者に関する基礎データの把握」のため、歴史的前提となる平安時代を中心に、『東寺長者補任』等のデータ分析と整理を進めている。このうち東寺長者の師弟関係情報に関しては、法脈関係史料を再検討しながら、収集データ整理を重ねてきた。11世紀くらいまでの古い時期については、関係史料の残存が少ない上に、いわゆる「野沢(やたく)十二流」の未確立段階ゆえに、事実関係の把握や評価には難しさを伴う。しかし、当該期における伝法灌頂と「阿闍梨職位」の授受の特質などは、東寺長者論や宗派秩序論を考える上で重要となるため、かつての拙論を踏まえつつ、再検討を進めている。
東寺長者の俗縁関係情報に関しても、データの収集整理を重ねている。『東寺長者補任』や法脈関係史料には、父系情報が併記される場合が多いが、他の史料から母系情報を補うことによって、いくつかの新たな気づきを得た。
第2段階の「仁和寺系の東寺長者の拠点院家の検討」についても、上記データの補足や、確認検証の作業と併せて進めてきた。平安時代の拠点院家については不明な点が多く、後世ほど固定的ではなかった様子が窺え、実証的把握には難しさを伴う。また、現地景観が大きく変貌している場合がほとんどであるため、発掘調査成果から学びつつ、所伝の検証等も踏まえ、景観を復元的に把握しながら検討する作業を並行して進めている。
関係史料の出張調査では、史料の校訂作業ができた上に、経典とその紙背文書との具体的な関係情報など、貴重な成果が得られた。記して謝意を表したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画の第1段階「中世の東寺長者に関する基礎データの把握」と、第2段階「仁和寺系の東寺長者の拠点院家に関する検討」については、活字史料の検討を中心としつつ、過去に入手した写真版との校訂を進めながら、出張調査も実施し、上述のような進捗状況となっている。ただし出張調査については、当初計画ではコロナ禍の終息に期待し、もっと多めの頻度と期間を予定していたのだが、年明けになっても、出張予定先の史料所蔵機関でのコロナ禍対策が緩和されない見通しとなったため、多くを次年度に繰り越す形にて計画変更をおこなった。このため、活字史料の校訂や未活字史料の検討については、次年度の出張調査にて補足してゆきたい。

今後の研究の推進方策

本研究では、今年度も引き続き、①東寺長者への昇進制度とその実態の解明、②東寺長者の俗縁(出自身分)の解明、③東寺長者の法流(師弟関係)の解明、④東寺長者の拠点院家群の分布構造とその変容の解明、これらを目指す。このための第1段階「中世の東寺長者に関する基礎データの把握」と、第2段階「仁和寺系の東寺長者の拠点院家に関する検討」については、1年目以来の作業をひきつづき継続するともに、1年目に未完となった史料調査や現地踏査を補いながら、充実させたい。第3段階「仁和寺以外の東寺長者の拠点院家に関する検討」については、当初予定の通り、2年目となる今年度から着手することとし、醍醐寺・勧修寺・随心院・鎌倉所在寺社等を対象とする検討作業を進めたい。これらに関する史料調査や現地踏査も、あわせて実施したい。

次年度使用額が生じた理由

年度当初の計画段階では、コロナ禍の終息に期待して、出張調査の頻度と期間を多めに予定していたが、出張予定先の史料所蔵機関でのコロナ禍対策が緩和されぬままとなった。調査予約は、2週間先の範囲に限定されていたことから計画を立てづらく、数日間連続しての調査予約も不可となっていた。限られた旅費と日程との関係で、遠距離の日帰り出張を何度も繰り返すわけにはいかなかったため、緩和の機会を窺っていたところ、年明けの時点でこの状態に変更なしという見通しとなった。そこで、次年度への繰り越し制度をありがたく活用させていただく形で、出張計画を変更して対応することとした。

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公開日: 2024-12-25  

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