研究課題/領域番号 |
23K00884
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
藤波 伸嘉 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90613886)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | オスマン帝国 / 憲法 / 国際法 / 行政法 / 正教会 |
研究実績の概要 |
本研究課題の一年目に当たる本年度は、今後の研究の基礎を築くべく、史料の収集及び分析に重点を置きつつも、新たな史料収集や論文執筆にも着手した。 家庭の事情や新型コロナウイルス感染症の影響により長らく在外調査をすることができなかったが、本年度は短期間とはいえ2月にトルコ共和国イスタンブルでの調査を行なうことができた。オスマン文書館及びイスラーム研究センター附属図書館にて、現地でなければ実見不可能な文書史料の調査及び収集を行なうと共に、市内書店にてやはり現地でなければ入手の難しい研究書を購入することができた。 このかん、依頼により学会誌に日本語論文を一本寄稿したほか、外国の学会誌に投稿した英語論文がオンラインによる先行公開という形で一本掲載された。そのほか、3月には英語による研究報告を一回行なっている。これらは近代オスマン帝国をめぐる憲法制定や法学思想の展開をムスリムと正教徒の両者から、できる限り世界史全体の動向に位置付けつつトルコ語ギリシア語に加え西欧諸語の史料に基づいて考察した成果であり、国際的にも一定の評価を得ているものと思われる。また、依頼により論文集に日本語論文を一本寄稿した。これは前年度に行なったシンポジウムの成果であり、オスマン帝国の君主号にまつわる諸問題をやはりトルコ語ギリシア語に加え西欧諸語の史料に基づいて論じた。これは研究成果の一般社会への還元という点でも意味のある仕事だと思われる。 総じて本年度は、在外調査と研究発表の両面で一定の成果を上げることができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トルコ共和国での調査を再開できたこと、和英両言語による研究発表も一定の水準で行なうことができたこと、並行して手持ちの史料の分析もそれなりに進めることができたことに鑑み、おおむね計画通り順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、年に1~2度の在外調査を基本に据えつつ、それ以外の時期は収集した史料の分析を進めていく。研究の進展に応じて、和英両言語での発表を積極的に行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は都合により夏休み期間には在外調査を行なうことができず、また冬休み期間の在外調査も短期に留めざるを得なかった。他方で学内で得た競争的資金を優先的に用いる必要があったため、結果として科研費からの支出額は計画を下回ることとなった。ただし昨今の航空運賃の高止まりや為替の動向に鑑みれば、長期の在外調査には多額の費用が必要となることが想定されるため、同一研究課題の下での今後の在外調査を一層充実させるべく、今年度中に無理に支出を増やすのではなく、主に次年度以降の旅費に充当すべく、年度後半の科研費からの支出は抑制した。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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